ヘソの曲り角

億万長者のヘソの曲り角のネタバレレビュー・内容・結末

億万長者(1954年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ナンセンスとはこれのこと。放射能を知らない娘が原爆を完成させ、若者たちは北と南に別れて逃げる。終劇。物語の何もかもを放り投げて走り去る。25の時を指す銀座?の時計が狂ってるのは時間か人か、と尋ねるが、そりゃあもう人に決まっておろう。木村功と他の人物の違いはねじれを自覚してるか否かの差では。それで悩んでアクション起こした木村功が狂人扱い。これが世の常。作劇の常。

前半は恐ろしくテンポが良くてめちゃくちゃ笑えるのだがだんだん失速していく、というか見てる人はおろか制作側すら着地点を見失ってがむしゃらにやっている気がする。脚本協力の人数多いしなんか安部公房いるし。たしかに新東宝ってのが分かるノリ。見切り発車感。あと"アニメ出身の市川崑"という感じのするOPやひとっ走りで東京から沼津まですっ飛んじゃう表現が満載。ユーモアのセンスがエグい。

木村功、山田五十鈴、伊藤雄之助、久我美子、左幸子etc…とにかく良い役者が勢揃い。MVPは山田五十鈴。

なんとなく、羅生門から悪い奴ほどよく眠るくらいまでの黒澤が10年かけて描いたものを80分でやり仰せた感がある。『生きる』の市川崑版というのは穿った見方かもしれないが、『生きものの記録』や『どん底』すらもごちゃ混ぜで黒澤映画経験者も数多く出演してるのがなぜかそんな気がしてくる。