Eyesworth

ゾンビ/ディレクターズカット完全版のEyesworthのレビュー・感想・評価

4.7
【ショッピングモールの軍隊】

ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ作の中で最も傑作と名高い二作目。ディレクターズ・カット版。

〈あらすじ〉
突如、死者が蘇り、次々と人間を襲い始める。彼らに襲われた人間もゾンビ化し、人肉を求めて街にゾンビがあふれる。TV局スタッフのフランシーンとスティーヴン、SWAT隊員のロジャーとピーターは郊外のショッピングモールへ逃げ込むが、そこはゾンビの巣窟で……。


〈所感〉
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を経て、ゾンビ軍団がアメリカ全土を危機に陥れていることがわかる。限られた空間の占拠を巡って、人間とゾンビ、または人間同士が繰り広げる戦いだが、カット割りのテンポが良く、見応え十分だった。139分の作品とあって多少の間延び感はあるが、その悠長さも悪くない。ショッピングモールという人間の欲望が結集した場所で、己の安全のためにゾンビと化した人間たちを殺りまくるというプロットにどこかアイロニーを感じてならない。明日は我が身どころか数時間後に自分も彼らと同じように徘徊する運命なのに。ただのゾンビ映画ではなく、現代社会への風刺も込められているのだろうか。生きてても死んでも欲望の限りを尽くす人間、なんとも哀れである。ゾンビというのは存在からして恐ろしいのは当然だが、数が非常に多く、非常に脆い点にこそ意義があるように思う。その脆さが我々人間たちの驚くべき脆さを物語っているのだから。
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