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ゾンビ/ディレクターズカット完全版の346のレビュー・感想・評価

4.2
ロメロのゾンビ初鑑賞。

うん、これが原点なんだね。
そりゃ遡ればナイトオブザリビングデッドも観なきゃなんだろうけど、とりあえず、ここまでにしとこう。

うん、観て思ったのは、やはりゾンビという設定は完成されているなという印象。
多少の劣化はあるが姿形は人であり、残った記憶のため行動も人らしくはあるのだけど、彼らに自由意志はなく、コミュニケーションも不可能なため、人の姿をした、人ならざるものがゾンビという存在。
そう、それで、ゾンビなのだ。

そして、そこで1番大事だった要素は、噛まれれば自分もそうなってしまうというルール。だからこそ、ゾンビはあくまで、人としての怪物。もしくは怪物としての人。
どこからかやってきたり、自然発生的な化物じゃないんだな。

だから、そこに哲学をみるという人がいるとしても不思議じゃないなと思える。違う人種や、違う思想をもつ人間たちに対する畏怖が描かれていると言われたら、そうかもなと思える。
それを生み出しただけでも、やっぱすごいなー。


あと、なにがいいって、リメイク版のドーンオブザデッドよりいいのは、動きが遅いことだと思う。ショーンがいいのも、ゾンビらしい動きにしているとこが活きてる。

それは、思考する猶予があるという恐怖。

パニックムービーとしては、リメイク版のほうが危機的状況に直面する展開が多くハラハラするのだけど、描かれている世界が狭い印象を受ける。本家のほうがある程度、力でゾンビを抑えることが出来るがゆえに、この世界の終末感が空気として画面いっぱいに広がっていて、そこに重みを感じる。
箱の中に閉じ込められた人間が、少しずつ増えていく水かさに慄くような怖さ。今この瞬間を生き延びるというよりも、明日がどうなるのかという、希望を携えた絶望。

だから、リメイク版はゾンビと戦っている感じはしたけど、この終末的世界とは戦ってないんだよね。こちらを観てしまうとリメイク版は人としての葛藤が浅い気がしてくるなー。いや、人類としての葛藤かな。それゆえに、あの終わり方だったとも言えるけど。


そう、このロメロのゾンビは人類対ゾンビなんだよね。
あのショッピングモールという隔離された状況を舞台にして、それをちゃんと描いている。その上で、主人公たちの足を引っ張るクソみたいな存在が同じく人間であるという、皮肉も効いている。

だからこそなんだよね。
あの終わり方が素晴らしいんだ。
うん、いい映画だったな。
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