てつこてつ

OUTのてつこてつのレビュー・感想・評価

OUT(2002年製作の映画)
3.5
今、沢山のレビュアーの方が上げている同名タイトルと別物なのは、何卒、ご容赦の程を・・。

桐野夏生のこの原作を読んだ時は、あまりにも面白くて一気読み。また、普通の主婦を主人公にしながらもハードボイルドな雰囲気漂う作風が好きで、一時期、「顔に降りかかる雨」「天使に見捨てられた夜」「柔らかな頬」などの著作をむさぶり読んだ。

深夜の弁当工場のパートで働く普通の主婦たちが、仲間が起こした殺人事件の死体処理の為に浴室でバラバラに解体。やがて、それを副業として請け負って行くという、結構衝撃的なストーリー。でも、色んな犯罪ドキュメンタリーや実際に起こったバラバラ殺人の手記なんかを読むと、遺体を運ぶ体力が無いため、思い悩んだ挙げ句、女性が犯人の場合、浴室で解体することは結構多いらしく、リアリティもある。

1999年に何と地上波の夜9時という時間帯で放送されていたドラマ版の主人公を演じた田中美佐子と、パート仲間で“師匠”と呼ばれる役どころを演じた渡辺えり子が原作で描かれていた通りのピッタリの役どころで、最終回の展開以外はかなり面白く好きなドラマだった。

遅れて製作されたこの映画版も知ってはいたが、そこそこボリュームがある原作の世界観をたった2時間の上映時間内で収めるのは絶対無理だろうと、ずっと見るのを避けてきた作品。

こうやって歳月が流れて鑑賞してみると、確かに重要なキャラともなるドラマ版ではデビュー間もない伊藤英明が演じていた日系ブラジル人の青年が登場しなかったり、原作では個人的には完璧な終わり方をしていたエンディングが大分変わっていたり、そもそも殺される筈の設定のキャラクターが生き延びたりと原作からの改変は随所に見られるものの、これはこれで有りだなあというのが正直な感想。

主役を演じた原田美枝子が、ドラマ版の田中美佐子に負けじ劣らぬ好演。普通の主婦でありながらも、崩壊した家庭環境に抱く虚しさ、クールでどこか格好いいキャラクターを上手く演じている。また、“師匠”を演じた賠償美津子も、少し美人過ぎるが、主人公との絆の深さをしっかりと見せてくれている。最後の二人の寒空での会話のシーンが個人的には本作の白眉かな。

派手好きでグループの中では問題児的なキャラを演じた室井滋、そもそもの発端となる事件を起こした西田尚美もキャラにハマってる。

主人公に淡い恋心を持ち、遺体解体の仕事話を持ち込む金貸し業を演じた若き日の香川照之も初々しい。

主人公たちを脅かす存在となる殺人の前科がある佐竹を演じたのが風間寛平ってのは、ドラマ版の柄本明に比べるとどうしても見劣りするが、登場シーン自体が少ないので、あの独特な容貌で台詞も少ないので作品の世界感を壊してはいない。

終盤の展開が若干長い気もするし、やはり、原作の終わり方が好きなので、かなり改変されたこのエンディングには納得行かないものの、役者陣の演技の良さと、しっかりとハードボイルド的な世界観は描かれているので、原作〉連続ドラマ版〉本作の順番にはなるが好きな作品。
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