オーウェン

キッドのオーウェンのレビュー・感想・評価

キッド(2000年製作の映画)
4.0
この映画「キッド」は、昔、子供だった全ての大人に捧げられた、人生に対する自問の旅を描いたファンタジーの佳作だ。

「キッド」は、忘れていた過去との出会いによって、今の自分を再発見するファンタスティックな作品で、ディズニー配給、ブルース・ウィリス主演の感動作だ。

ある日突然、8歳の頃の自分が目の前に現われたとしたら----。
こんな想像をしただけでも、ワクワクしてしまうようなシチュエーションが目の前で展開される、そんな映画なのです。

現実離れした物語だと笑い飛ばせないのは、もし自分が経験出来たら、どんなだろうって、誰もが共感出来る夢を実際に見せてくれているからだろうと思います。

「過去」「現在」「未来」のファンタジックな交流。
この辺りのツボの押さえ方が、"ディズニー映画の永遠の魅力"なのです。

イメージ・コンサルタントとして成功した40歳のラス(ブルース・ウィリス)の前に、8歳の頃の自分、ラスティ(スペンサー・ブレスリン)が登場します。

このラスティは大人になった自分に向かい、「パイロットじゃなくて、犬も飼ってなくて、家族もいなくて、独りぼっちなの? そんなの最低じゃない!」と語りかけ、子供の頃に抱いた夢を一つも叶えていないラスに幻滅してしまうのです。

オイオイ、その気持ちはわかるけど、あんまりひどい事を言うなよ、現実はそんなに甘いもんじゃないんだよって、思わず苦笑いしてラスティに言ってやりたくなります。

ただ、そうは言っても、胸の奥をズバッと衝かれるようなドキッとする発言である事も事実なので、またまた苦笑してしまいます。
そして、この事を契機として、ラスの"人生に対する自問の旅"が始まるのです。

8歳の自分に失望されたラスは、ショックを受けるが、気にくわないのはお互い様で、太っちょでドジなラスティは、実はラスが葬ろうとしていた暗い過去そのものだったのだと思います。

しかし、ラスは次第に過去の自分と心を通わせ、"忘れかけていた大切な何か"を思い出していくのです。
果たして、過去との出会いによって、未来は変わるのか?--------。

この映画で描かれている事は、私を含め、多くの人々が、かつてなりたかった大人になっていると、自信を持って断言出来る人は、きっと少ないだろうと思います。

だからと言って、この映画は過ぎた事を嘆かせるものではなく、時には子供の頃に抱いていた夢を振り返り、夢に託した自分の思いを想い出せば、明日へと前を向いて生きる力が湧いてくるはず----というそんな作者のメッセージが我々の心に優しく響いてくるのです。

つまり、この映画は昔、子供だった全ての大人に捧げられたファンタジーなのです。

ただ、欲を言えば、ラスとラスティのその後の人生を形成してしまうきっかけとなった、8歳の誕生日の出来事に、もっとインパクトを与えたり、赤いプロペラ機や犬のチェスターといった小道具を、もっと上手く使って名場面を作れば、もっともっと記憶に残る映画になったかも知れないのに----と、思うのは贅沢な高望みだろうか?

クリクリ眼でポッチャリほっぺの映画初出演のスペンサー・ブレスリンが、最高に愛らしく、ブルース・ウィリスを向こうにまわしても、一歩もひけをとらない演技を示していて、彼の存在なくしては、この映画は成立しなかっただろうと思われます。

そして、ヒロインのエイミーを演じたエミリー・モーティマーも可愛らしく、彼女の飾らないナチュラルな魅力は、男性からも女性からも好感を持たれそうな気がします。
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