真鍋新一

俺は地獄の部隊長の真鍋新一のレビュー・感想・評価

俺は地獄の部隊長(1963年製作の映画)
3.4
日活版『独立愚連隊』という声が多く上がっているが、概ねそういう認識でいいと思う。アキラが主題歌も歌う軽妙な戦争アクションを期待していたら、割とシビアな戦争映画だったのでかなり面食らった。とはいえ、現代のリベラルな思想にも通じるアキラの自由で誠実なキャラクターが戦争という現実の問題にどうやって向き合うかというところがこの映画のポイントであろう。「誰だって死にたくはないさ」。戦地の最前線でこのセリフを言ってくれるアキラがいてくれるだけで救われるものがある。

エキストラも爆発も特撮も、明らかに映画の規模に見合わない時間とお金が注ぎ込まれており、観ていて心配になってしまった。いつも盛りまくっている日活映画の宣伝コピーが、なぜ今回これを言わないのか。紛うことなき戦争アクション超大作。アキラの無国籍アクションみたいな軽いタイトルで相当損している。実際、興行成績に比べて制作費がかかりすぎなのだ。

いつもの日活アクションらしからぬ煮え切らない演出に苦言を呈したい気持ちもわかるが、戦争とは本来このように理不尽で煮え切らないものなので、こういうときに生真面目になる古川卓巳監督をどうしても嫌いになれない。1960年代の前半にしては相当入れ込んだ人体損壊描写もあり、ゾッとさせられる。ウッ、戦争反対。

いつもは安っぽい悪役かお調子者の味方ばかりやらされている近藤宏が、今回は風格をもって八路軍のリーダーを演じているのが素晴らしい。敵もまた同じ人間であり、だからこそ殺し合いは愚かだということ。これがしょうもないキャラクターだったら殺せ殺せとなってしまうからね。
真鍋新一

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