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レッスン!のesのネタバレレビュー・内容・結末

レッスン!(2006年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ピエール・デュレーヌ氏に始まるニューヨーク市の社交ダンスプログラムについては、ドキュメンタリー"Mad Hot Ballroom"(2005)を見た方がよく分かる。作中では高校生になっているが、本来のプログラムは小学校5年生が対象。

よくある話と言ってしまえば確かにそうなのだけれど、同時期に作られた『フリーダム・ライターズ』といい実話を基にした話という点が重要。
作品にならなければ知る事のなかった人物や活動、事件について知るきっかけになるという点で実話を基にした物語は重要な存在だと思うと同時に、プロデューサー側がこの手の特殊な教師による貧困層への寄り添い教育の話を好み、沢山作っていた辺りが当時の時代を反映していると思う。2001年に発足したブッシュ政権の減税立法で格差が拡大し貧困層が増え続けた事は、これらの映画制作に影響していると思う。

キャスティングがアントニオ・バンデラスとなっていたのでデュレーヌ氏の生い立ちに関しては匂わす程度のものだったが、実際はイギリス委任統治領時代のパレスチナ生まれで、英軍に所属するアイルランド人の父とパレスチナ人の母を持ち、子供時代は各地を転々としその後勃発したスエズ危機により難民としての経験を持っている。
上流階級による貧困層への啓蒙という構図にはならないようにしているし、アントニオ・バンデラスが醸す空気でバランスを調整しているけれど、彼の背景を知っているか否かで印象はかなり違うと思う。

ダンスシーンに関しては、あまり詳しくないので楽しめた。ただ人との付き合い方や礼儀や敬意を学ぶという重要な目的が少しそっちのけになり、結局勝ち負けの話に展開していくのはアメリカ映画の悪い所だと思う。
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