飛び交うヤジ、貧しさと失望に満ちた街。
行き場のない若者はただただ、やり場のない怒りを怒りという形でしか表すことができなかった。
人種や貧富の差別は私たちが思っているよりも複雑で長い歴史がある。
社会的に弱い立場の人間は、社会から、学校から、大人から、
「夢を持つな」「他人を信じるな」と教えられる。
そう、いろんな不条理な出来事に出会っても、彼らは耐えるしかできない。
何年も何年もかけて彼らは経験から、先生から、人生から、
「人生は辛くて苦しいもの、お前は耐えるために生まれてきたんだ」と言い聞かされる。
この映画では、そんな若者を不憫に思ったピエール先生が社交ダンスを無償で教える。
そして、ダンスは生徒に教える。
相手を信じること、
夢を見ること、
希望を持つこと、
人の善意を信じること、
自分を信じること、
そして、それは人類に平等に与えられた権利で、君達も頑張る権利があり、夢を見る権利がある、と。
ダンスの居残り授業でピエール先生はやさぐれ者のロックに言いました。
「彼女を旅に連れて行ってやるんだ、責任重大だぞ」
ロックはこの台詞を聞いて、表情が責任感を感じた表情に変わります。
とってもおしゃれで素敵な表現だなと。
最後のダンスシーンでは、ロックのパートナーの彼女は旅をしていた。
貧困や、自分を取り巻く全ての不幸に思っていた出来事を全て忘れて、人生は素晴らしいと噛み締める旅。
紛れもなく、ロックが連れて行ってあげた旅。彼女の表情が、本当に名シーン。
実在の人物の話。
現実は映画のようにシンプルではないのかもしれないけれど、
こうやって一人でも多くの人の心に平和な時間が溢れますようにと思えて、胸が熱くなった。