レインウォッチャー

死国のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

死国(1999年製作の映画)
2.5
筒井道隆「四国とはつまり『死国』…」
夏川結衣(俺)「ナッハッハッハッハッwwww
      …えっマジなん?ゴメン…」

なかなか大胆に放り込んだ映画である。時は『リング』熱冷めやらぬ1999年、ホラーブームの渦中で投下された作品ではないかと思う。
四国八十八ヶ所巡りを題材にした、ミステリ風味のムラ系・土着風俗系ホラー…かと思いきや、気づけば性格が悪い人たちの陰湿な三角関係ラブストーリーが主になっていく。えっと、なんでなんだぜ?

長所として、ヴィジュアル面には見どころも多い。
襖の向こうの底知れなさや日陰で見えない表情といった、闇や影のジト暗さには初期Jホラーの息吹を感じるし、何よりナチュラルボーンこの世のものじゃない・栗山千明=サヨリの存在感は鮮烈だ。神話少女そのままの、黙って立ってるだけで成立する冷たい妖気(※1)。夢枕に栗山千明はご褒美なのよ。

また、村の旧家に伝わるおどろおどろしい謎儀式描写は今作のサビといえる(はずだった)要素。唐突に始まるおばあと修験者とのリモート儀式バトルには、『哭声』から先駆けること10数年!と細かい興奮をしてみたり。
儀式の現場となる遺跡は、洞「穴」の前に大きな石の「棒」が立っていて、その洞穴の奥から死者が蘇ってくるのは産まれ直しの意味かな、とか妄想が捗る。

ただ残念なことに、そのへんはあまり深掘りしてくれない。サヨリの家系はいったい何だったのか、村のどこまでがこのことを知っていたのか…とか。原作小説だとどうなんだろうね。

謎解きはほとんど当てずっぽうみたいなものでなし崩し、終盤はなんとなくグダグダっとした心霊コント(※2)に付き合わされて、気づけば米良美一の歌声がきこえてくる。なぜだろう、米良さんが歌うとオチみたいに感じてしまう(失礼)。

ついでに地味な文句として、筒井道隆の台詞リスニングがまあまあ死国、いや地獄である。マスターの音質×本人の滑舌×方言、の3連コンボが決まっている。あるいは、これはわたしの修行が足りないゆえで、八十八ヶ所巡りきれば聞こえてくるのだろうか。

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※1:逆に言えば、喋ると残念ということでもある。なんだかヒトジャナイ感が雲散霧消し、全然ふつうの女の子に見えてしまうのだ。
クレジットを見ると「新人」とあったので、仕方ないっちゃあ仕方ないんだろうけど。第一回ミス東京ウォーカー、って、へぇ。またいらぬ知識が増えてしまった。

※2:笑いどころは多々あるが、まさか必殺技がサバ折り(©︎エドモンド本田)だなんて誰も予測しないじゃあないか。あんなのずるいよ。