DaikiKobayashi

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちのDaikiKobayashiのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公のウィルがすごく自分に投影された。
映画を見ている間、もし、自分がウィルの立場なら…って考えたら、どうしていただろう。

ウィルはすごく難解な数学を簡単に解くことができたり、有名な思想家の考えを楽々と記憶することができる。
まるで空を飛ぶことに長けている鳥のように、ウィルは学問に対する才能を持っていた。
しかし、過去の父親の虐待が原因で、自分の世界を閉ざしてしまう。また人に拒絶されることを恐れて、人に嫌われる前に人を捨ててしまう。
自分の外の世界に目を向けることを避けて、自分の知っている世界にとどまることはとても楽なことである。そしてその世界を知り尽くしているからこそ、天才になれる。やり尽くして全てを知っているからこそ居心地がいい。周りには自分を知っている仲間がいる。そんな世界は、両親のいないウィルには家庭みたいで居心地が良かった。
だがそのうちウィルはそこからの自立を迫られる。まるで大学を卒業する時、就職先の会社の街に向けて家を出る気分だろう。もの寂しさと、その先に待ってる孤独。その孤独こそが、彼の旅立ちを阻んでいるものであり、彼が戦っているものであった。
そんなウィルの孤独な側面を見つけ出してくれたのが、先生の存在である。先生はウィルの気持ちが手に取るようにわかっていた。先生はウィルに、君は本から得た知識だけはあるが、それを実際に見たり感じたりしたことがない、というのだ。閉ざされた狭い部屋の窓から、外の様子を永遠と観察しているような感覚だろうか。ウィルは自分を心の孤独に陥れた過去を引きづり出される事を恐れた。その為に先生に対して有りとあらゆる頭の引き出しを開けて抵抗した。先生自身も過去のキズと戦いながら、ウィルの心の中心に迫っていく。ウィルは次第に先生の言葉にそそられるようになり、少しづつ、新たな一歩を踏み出すようになる。そしてついに、数学教授推薦の面接を受けて就職する事を決意したが、彼はそれを辞退してしまう。あるとき、親友がウィルの家をいつも通りノックした。名前を叫んだ。しかし彼は家にいなかった。
ウィルは最後に先生に手紙を残した。それには「教授には悪いけど、就職を辞退した。僕には愛している人がいるから」と書かれてあった。

自分の才能を行かせるところを見つけることが、彼の一つ目の答えだった。だが最後に決めた、彼にとって1番優先するべきで大切にしたいと思ったことは、「愛」だったのだ。

閑話休題
他のハーバード大の学生とは違う、ウィルという一人の人間がすごく見やすかった。
というのは、ウィルは相手に合わせることなんて一つもなく、自分の事を第1に考えている。だからこそ気に触る質問をされると、すぐに話を自分のペースに転調し、自分の心の奥底の核にバリアーを張ってしまう。
しかしウィルが相手と関わる際の表情や口調からは、彼の素直な状態をそのままに表していることがわかる。彼自身は一切気なんて使う事なく、なお且つ、1人の先生に自らを全て知ってもらうことができた。自分をさらけ出すきっかけを作ることができた。
ウィルから学べることは、相手に合わせなくても、自分自身をしっかり見つめて、素直な自分をそのままに差し出すことができれば、相手に自分をわかってもらい、且つ受け入れてもらえる、ということである。自分を偽っていたり、自分の意思を抑えてまで相手に合わせていては、いつまでたっても本当の自分なんて理解してもらえないし、関わっている相手や自分自身さえも辛くなってくるだろう。


本当は自分が何をしたいのか、自分がしたい事を考えるのを避けて、ずっと自分自身に言い訳を繰り返してきた彼は、最後なってようやく自分の答えを見つけだした。その様がとても心に寄り添うような、励みになるような映画だった。
DaikiKobayashi

DaikiKobayashi