映画おじいさん

蟻の街のマリアの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

蟻の街のマリア(1958年製作の映画)
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実話である物語のバックグラウンドを知らなければ、単なるザ・美談な取るに足らない映画では。

ここではアダ名で呼びあうんだと、絵が上手い奴は直球で「ピカソ」だったり、子供をばんばん産むおばさんは「鶏ばあさん」だったりで面白い。アダ名で呼び合うっていうのが、いかにもスラム街。しかしその子供たちは名前で呼び合っているのは良い演出だった。

主人公の北原先生がどうして蟻の街に身を捧げるのかが伝わらなくて社会性のない人、さらに言えばちょっと狂人にさえ見えてしまったのは残念。そもそもあんまり魅力のある俳優でもなかった。何で抜擢されたんだろう?
あと後任の先生を嫌な女に描いていたのも謎。

南原伸二や佐野周二のバックグラウンドも描いて欲しかったけど、当時の観客は実際のモデルを知っていたのかも。

南原伸二がキリスト教信者は嫌いだと言い捨てたり、若い白人牧師が蟻の街の住民はみんなドロボウと言い切ったりして、キリスト教どっぷりじゃないところは良かったかも。

とにかく南原伸二(南原宏治)は豊川悦司に見えた。
台詞なく映り込んでいる時も飯田蝶子はバタヤのおばさんにしか見えなかったのは凄い。『どっこい生きてる』(今井正)でのニコヨンばばあと同じ感じ。
現場リーダー格の三井弘次や、中村是好、浜村純など(見た目)ニコヨン俳優勢ぞろいが嬉しい。

飯田蝶子の息子役の丸山明宏の使い方は勿体ない。オープニングだけでなくもっと歌わせてあげて。。

今村昌平や浦山桐郎は本作をどう思ったのだろうかが気になるところ。