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チャカ LONELY HITMANのminamiのネタバレレビュー・内容・結末

チャカ LONELY HITMAN(1998年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 命を懸けた愛と友情の悲しく切ないストーリー。光の陰影が美しい映像と、重厚な音楽も印象的で、見ごたえのある作品でした。

 主人公は、江本組若頭代行で「チャカ」の異名を持つ凄腕のヒットマン・島(竹内力)。膵臓炎をわずらい入院中であるが、組長代行・深沢(菅田俊)とは強い絆で結ばれており、組がピンチの時には病院を抜け出して駆けつける。物語終盤で、二人が過去に生死を共にして闘っていたことや、深沢が島の命を助けていたことが分かるのだが、そんな説明がなくても、冒頭からこの二人の絆は十分に伝わってくる。

 深沢を瀕死の状態にした丸山組・白井にとどめを刺そうとした島を、深沢が引き留めるシーン。血まみれの深沢が「殺すなや…挑発すんな」と言って、島を抱き寄せ手を握り、その手からそっと銃を離すシーンは、美しく、どこか官能的ですらある。

 結局、深沢殺しに失敗した白井は組織に殺され、舎弟の誠(木下ほうか)が(形の上では組を破門にされた上で)その命令を引き継ぐことになる。ゴルフ場にて深沢を狙う誠…しかし、またしても島が深沢の危機に駆け付け、深沢を守る。この時に島は、(誠の彼女に命だけは助けてほしいと懇願されていたため)誠にとどめは刺さないのだが、その後、誠は再び深沢の元に現れ、ついに深沢を殺害するのだった。

 あの時、ゴルフ場にて誠を殺していれば…と島は後悔したに違いないが、しかし深沢もまた、あの夜、島に(自分を襲った)白井を殺させなかった。そして帰りの車で「俺はヤクザに向いてないのかもしれないな」と島に語っている。島も深沢も、情に脆いところがヤクザとしては致命傷だったのかもしれないが、似た者同士だったのだろう。だからこそお互い強く惹かれあっていたのかもしれない。

 深沢は自分の命が消えかける寸前に、島と魂で会話をするが、終始笑顔で過去の思い出を楽しく振り返っていた。「あの時のラーメンうまかったよなぁ」「じゃぁ俺…行くわ」と穏やかな顔で旅立つ深沢。このシーンは本当に胸が締め付けられる。

 そして島は、深沢の復讐を果たすべく組長の丸山(志賀勝)の元へ向かう。妻と我が子(赤ん坊)を盾に身を隠す丸山だったが、この時の深沢は躊躇なく丸山を射殺するのだった。

 また、この作品では、島に思いを寄せる看護師の順子と、丸山組の誠を愛するユキコという二人の女性の愛も描かれる。順子に接する時の島は穏やかでちょっとヤンチャで、力さんのトレンディぶり(トレンディとは)が遺憾なく発揮されており、直視できないくらいに眩しい。順子は赤ちゃんを身ごもり、島は「この仕事が終わった家族三人で田舎へ帰ろう」と言い残し、丸山の元へ復讐に向かうのだが…。

 ちなみに、二人の仲を取り持とうとする舎弟の真野(山口祥行)がめちゃくちゃ可愛くて、二人の会話中にそっとそれぞれの顔を伺い見る細かい演技や、離席する際の「ゆっくり…すげぇゆっくりしってください」という可愛いセリフに、私は悶絶したのでした。仔犬のように島に懐く可愛い真野。真野 is ザ・癒し。

 でも、そんな真野が、誠を始末しておかなかった島に怒りを爆発させたのも衝撃的。「あんた一体何やってたんですか…」からの「なにやってたんだよ、おい!!」と胸ぐらをつかんで病院の床にたたきつける!(あの時ガードに付いていた真野の責任も結構大きいのでは?異変に気付いたの遅かったよね?)とか思わなくもないけど、それだけ強く深沢を慕っていたことが伝わってきて、これもまた胸アツシーンだったのでした。

 一方、誠(木下ほうか)とユキコの関係は、甲斐性のない誠にユキコが強い母性愛を注いでおり、命がけで島に誠の命乞いをするシーンも。しかし誠は命を落とし、最後にユキコが向かったのは島の元。誠が命を落としたのは島のせいではなかったが、ユキコが順子の大きなお腹を羨む描写もあったことから、この二人を幸せにはさせないという思いもあったのかもしれない。

 この作品において、ほうかさんの魅力も際立っており、本性が分からないもっちゃりとした不思議な感じ、壮絶な暴力シーン、死ぬ前のニヤリという不気味な顔…どれもとても印象的でした。
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