おばす

レミーのおいしいレストランのおばすのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

見ているだけでお腹が鳴ってしまうような映画。今後ふとした時に思い出して何回でもみたい。なにかに夢中になって食事をおろそかにしてしまったときとか。

美味しいものを食べたい美食家VS食べ物は燃料(栄養)
@ネズミの世界
という人間の世界でも存在する分断がネズミの世界でも起きていて、共感しやすかった。私は前者だけど、後者派閥の人はこの作品を見たらどう思うのだろう。
ちなみにレミーは鼻が利く設定で、舞台がフランスだけど好きな漫画の「Artiste」は参考にしているのだろうか、と思いをはせるなどした。レミーとリングイニの特徴を合わせて作るという感じだろうか。そうなるとアツい。料理の物語の中で、設定や仕組みが継承されながら違う味つけで枝分かれしていくなんて…しかもそれがネズミの話から始まるなんて…これは妄想ですが、アツい。

あとは調理をしている最中に雷に打たれるシーンがあるけれど、それでも味について考えるのはあまりに天才タイプだよレミーさん。

ニモの時も思ったのだけど水の流れの表現があまりにリアルで怖くなる。濁流とか。

グストーの精神「誰にでも料理はできる」この一言が最後まで効いてきて、作品全体のテーマになっているのか。グストーの亡霊がレミーのことをコックって呼ぶのだとか。

あと、個人的にわくわくしたのはネズミの調理シーン。レミーだけでなくこれは最後の方のねずみたちの団体戦もそう。彼らが創意工夫でスプーンを動かしたり厨房を滑りまわったりするのが、想像できないけどものができていく面白さがあって、音楽も相まって気分が高まる。

ただ結構ちゃんと社会問題的な部分にも言及している気がして、女の社会進出の難しさだったり、相続問題だったり。けっこう展開の数は多いしそれぞれ早いけれど、変な感じもなくスムーズに回収されていったように思う。

あとは、味わうということをレミーが教えてくれたかも。
エミールに対して「目を閉じて、ゆっくりと噛んで味のことだけ考えて」
と言っているシーンがあって、なんとなく味わうだったりおいしいということはどう感じればいいかわからないことがあった。それがわかる人はどういう感覚なのか、どうやって感じているのかずっと疑問に思っていた。その答えのひとつのヒントになったかも。まずはそこにあるゆでたまごで試してみようかな。

最後に、アラジンでもそうだったのだけど、素直になるというパートが入った。レミーの存在を明かすということでもあり、それをイーゴにすら素直に伝える。エンディングはそれがあるからかみんな顔は晴れやかで、業界から干されたり店が閉店したこともナレーションで伝えられて終わる。それでも彼らの顔が明るいのは素直だから。まっすぐに生きているから、どうなっても受け入れられるのか。見せ方によっては背伸びしやすくなった時代。素直になるということ、そのままでいることを見せることがいかに大切かを教えられた。


【メモしたおいた言葉】
レミー「父さんがしらないことを書き集めたら本ができる。何冊もね。そういうことを知りたくて本を読むんだ」
グストー「偉大な料理は勇気から生まれる」
グストー「後ろばかり向いていると前で待っているヤツに気付かないぞ」
グストー「料理を愛する者のもとには食べ物がやってくる」
エミール「幸せの鍵は選り好みしないこと」
イーゴ「誰もが偉大な芸術家に慣れるわけではないが、誰が偉大な芸術家になってもおかしくない」⇛イーゴの最後の批評は名文。
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