せみ多論

レミーのおいしいレストランのせみ多論のレビュー・感想・評価

4.0
ブラッド・バード好きだ。本作も、『アイアンジャイアント』も『ミスターインクレディブル』も。話も素敵であるけど、忘れられないワンシーンが残る。『アイアンジャイアント』で言えばラストのジャイアントの表情。本作で言えば件のラタトゥイユのシーン。

テーマは『アイアンジャイアント』と同じではないかと感じる。持って生まれたものだけで全てが決まるなんてことはないということ、ではないかと。
破壊兵器として生まれたであろうジャイアントが正義のヒーロー、スーパーマンになることを夢見たように、本作のレミーもネズミに生まれながら料理人になることを夢見る。ネズミが料理をするなんてと思った人も多いと思う。衛生的にどうなのだと。
ただあたくし料理人としておおよそ相応しくないと思われるネズミだからこそ、価値があると思う。店の行方はともかくとして、衛生的な問題は本作では発生はしない。つまり衛生的な問題、現実的な問題がないとするならば、ネズミが料理をしたっていいじゃないですか?ということだ。
それでも、やっぱりネズミが料理をするなんてというなら、それは持って生まれたもので各々の枠が決まってしまうということ。ブラッドバードがそんなことはないんだということを伝えるために、主人公をネズミにするという極端なやり方を選んだのは痛快だった。

誰しもが望んだ何かになれたり、思った通りにやり遂げられたりするかはわからない。そこには当然能力の差はあるし、運もあるかもしれない。
ただ、やろうとすること、機会や可能性だけは否定しない。持って生まれたものだけで閉ざされてしまう世界なんて嫌だという考えに強く共感する。
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