アトミ

その壁を砕けのアトミのネタバレレビュー・内容・結末

その壁を砕け(1959年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

50点

3年間、タバコも止め、コツコツと貯金し、20万円のワゴン車をキャッシュで買った自動車修理工の渡辺三郎。
社長はじめ、同僚皆から祝福され円満退社。
独立しての新天地、婚約者道田とし江が待つ新潟へとワゴンをぶっ飛ばした(お昼)。

とし江も看護師を3年間欠勤無しで勤め、看護部長から祝儀も頂き、寿円満退社。
看護部長はじめ、同僚から祝福され、送別会も開いてもらう。
そんな人望厚く、性格もいい2人は新しい門出に胸を膨らませた。

三郎は途中、沼田にある食堂で腹ごしらえ。
ラーメン大とワンタンと大盛りライス2つを注文したあげく、おにぎり大を5つまで作らせ従業員や客に変わり者に見られる。

夜。
三国峠手前のスタンドで給油。
新潟までの道を尋ねた。

三国峠てっぺん辺りで休憩。
おにぎりを食べる三郎。
通りがかったトラック運ちゃんに新潟までの道を尋ねた。
人見知りしないというか誰とでも仲良くなっちゃう感じの良い青年三郎。

そんな三郎。
峠を越え(23時40分)、鉢の木村へと入る。
と、郵便局前で「駅まで送って欲しい」という小さなバッグを持ったヒッチハイカー男を拾った。
が、男は駅手前の天神橋で車を降りた。

車を走らせる三郎は駅前駐在所で待ち構えていた警官に停められ、取り押さえられる。
意味がわからず騒ぐ三郎。

鉢の木町郵便局で強盗殺人事件が起こっていた。
局長谷川徳蔵がナタで頭をかち割られ死亡。
妻民子も頭をかち割られ重症。
現金15万円が盗まれた。
第1発見者は隣の納戸で寝ており、叫び声で目が覚め、裏口へ行く足音を聞いたと証言した局長長男嫁(未亡人)の咲子。
助けを呼ぶ咲子の声に現れた郵便局に隣接する酒屋の主人(0時頃)。「自動車の音を聞いた!」と証言。
石工(いしく)の親方と将棋を打ってた森山巡査に酒屋の主人が知らせに来た。
森山巡査は現場に駆けつけ(0時10分)、駐在所に連絡。
車を運転中=容疑者である三郎を確保。といった流れ。
次男夫婦は隣村へ映画に出かけており留守にしていた。

三郎は無実を訴えるも刑事達は耳を貸さない。
そのまま事件現場に連行される。
検事、刑事らは重症の民子を無理矢理起こし、面通し。
民子は三郎を見た途端「この人です!」と証言。
三郎はその直後に手錠をかけられた。

翌日。
新潟の病院。とし江は寮を後にした。
待ち合わせの新潟駅朝8時。刑事に声をかけられる。

そんな中。
森山巡査は局長に線香をあげるために郵便局へ。
事務をしている咲子に想いを寄せている森山巡査は気になり、チラチラと咲子を見る。
次男は「隣に寝ていて助けに行くのが遅かった。」と咲子にお冠。
邪魔者をいびり出す口実としてうってつけだった。
そして民子は家の中を徘徊するような状態だった。

そんな中。
とし江は三郎と面会。
疑いが晴れて出てくるまで待つと三郎に伝えた。

翌日。
刑事らは現場検証。三郎の通った東京からのルートでの聞き込み等行った。

とし江は刑務所近くの食堂で働らかせてもらっていた。
警察署長がとし江のもとを尋ねた。
三郎にはアリバイがなく、郵便局前で乗せたヒッチハイカー男という供述にも証拠がないため起訴されることとなった。
捜査の結果、三郎は犯行の20分前には鉢の木村に差し掛かったことがわかったが、捜査が難航すると民子の証言が決め手となってしまう。
が、署長は三郎ととし江の会話を聞いて(人間性を見て)、とし江を信じてみたくなった。
裁判が開かれる長岡にいい弁護士がいる事をとし江に教えた。


とし江は鮫島弁護士を訪ねた。
長岡で働いて金を工面する覚悟と無罪を確信している強い気持ちを持つとし江に鮫島は心動かされ、依頼を受けた。

そんな中。
明日から本署勤め(刑事へ昇格)が決まった森山巡査は駅で咲子に出会う。
咲子は離縁となり田舎(柏崎)へ帰ることとなったと話し、列車に乗った。

翌日。
森山刑事は裁判を傍聴する。
と、傍聴席に咲子を見つけた。
が、次に視線を向けた時には咲子の姿はなかった。
森山は違和感を感じる。

鮫島は
①ナタに三郎の指紋なし。検事調書には手袋を使用したとあるが、手袋の在処がわからない点。それにナタを触ったのは他にもいる点(この時咲子が顔を伏せたのを森山刑事は見ていた)。
②車は鉢の木村手前で23時40分。捕まった駅前交番で0時30分。
40キロ平均で走った場合、時間は15分しか余らない。その15分間で犯行ができるかが不明瞭な点。その15分は郵便局から男を乗せて、天神橋で降ろした時間と合う点。
を上げた。

裁判が終わり、鮫島は森山刑事を誘い、食堂へ。
鮫島は腑に落ちない点を森山刑事に話した。
盗まれた金は15万円。三郎の所持金は4万ちょっと。信用金庫を調べても合致する。と。
そして鮫島は森山刑事にココで働いているとし江を紹介した。
とし江は三郎が人殺しをする様な人ではないと確信し、ココで疑いが晴れるのを待ってるんだと説明した。

夜。
本署へ戻った森山刑事は放置されみすぼらしくなって行く三郎のワゴン車とルームミラーにかけられた人形を見て、三郎ととし江の事を考えた。
と、ふと、傍聴席にいた「こちらに気づき、気まづい顔をした咲子」のことを思い出した。

翌日。
森山刑事は部長に見合いをしたいから2、3日休暇が欲しいと頼み、咲子に会いに行く。
が、咲子は佐渡へ嫁入りしたと咲子母から聞いた。

森山刑事は佐渡へ。
気まづい顔をする咲子。
旦那は何と、鉢の木村の災害復旧堤防工事に出稼ぎに来ていた石工作業員(森山の顔見知り)だった。コイツも何だか気まづそうな顔をしていた。


2人と別れた森山刑事だったが、違和感は増すばかり。
「もし三郎が犯人じゃなかったら、、、。」


翌日。
森山刑事はいても立ってもいられなくなり、1人、事件現場へ行ってみる。
そして天神橋へ。

と、怪しい男が川原の藪の中で穴を掘っていた。
森山刑事は男を追跡した。
バスをチャリで追いかけ、列車に飛び乗る。

夜。
男が降りたのは東京上野。
が、路地裏で男を見失う。
と、とある建物で「人の気配」を感じた森山刑事。
その建物の一室で「男の死体」を発見した。

翌日。
森山刑事は本署で報告。
殺された男は博打依存の富永キヨミ25歳住所不定。
所持金15万円。
チンピラ3人組(直ぐに逮捕された)に博打の負け金を(15万円も持っておきながら)支払わず、怒りを買い殺された。
森山刑事は天神橋川原の藪から掘り出した可能性があると報告した。
が、部長はそれを認めない。
もし三郎が犯人じゃないとなると、署長、部長、森山刑事は処分の対象になる。と。
だが、森山刑事は正義を貫くことを選択した。

裁判。
森山刑事は富永の写真を鮫島に渡した。
鮫島は裁判官に申し出て、写真を三郎に見せた。
「この男がワゴン車に乗った!」
三郎は叫んだ。

そして石工の親方は森山巡査との将棋で王手飛車をかけ3タテ。
その時丁度家の前を車が通ったことを思い出し証言した。
森山巡査が勝負を投げ出した10分後に酒屋主人が事件を知らせにやって来た。
これでは当然犯行は行えない。慎重に実地検証して頂きたいと鮫島は訴えた。
検察は必要ないと突っぱねたが、裁判官の判断により実地検証が行われる(捜査のやり直し)こととなった。


実地検証当日。
村人らが大勢集まる中、事件現場の郵便局にやって来た関係者。
とし江は村人から生卵を顔にぶつけられた。
それを本気で怒る森山刑事。

実験1
犯行の再現。
ナタを振りかぶった犯人に対して民子は布団を被り防御した。

実験2
咲子が大声で助けを呼びながら玄関の方へ走る。

実験3
咲子が大声で助けを呼びながら玄関へ。
と、酒屋主人が駆けつけた。

実験4
もう一度犯行の再現。
と、今回民子はナタを振りかぶった犯人に対して、両手で顔を隠した。
裁判官が再現を止める。
「思わず布団を被ったんじゃないですか?だからキズが浅かった。故に犯人の顔を見る時間もなかったはずだ。」
悩む民子に本当の事を言って欲しいととし江は泣いて頼んだ。が、民子は沈黙(てか事件後から痴呆な感じ)。

実験5
布団で寝ている咲子。
物音を聞き、飛び起きる再現を促されるが、できない。
咲子は三郎の手錠をはめられた両手を見て、いたたまれなくなり、「嘘をついていた」と自白した。

本当は隣に寝ていなかった。
裏の納屋で石工従業員(今旦那)と交尾をしていた。
そんなピロートーク中。玄関から出てきた「怪しい男」を見た。と。
その時は徳蔵が殺されていたとは夢にも思わなかった。
咲子は玄関で何かを踏み、手に取ってみるとそれは血まみれのナタだった(鮫島の推理に目を伏せた理由)。
そして殺人現場を目の当たりにし、助けを求めた。

咲子は恥ずかしいことをしてたから言えなかったと泣いて謝った。
鮫島に富永の写真を見せられた咲子は「この人です!」と証言した。
とし江は泣き崩れ、咲子に礼を言った。


タイヤがパンクし、本署に放置されていたワゴン車のタイヤに空気が入れられた。
三郎ととし江はワゴン車に乗り込む。
森山刑事は三郎に握手を求め、三郎は森山刑事の手を力強く握った。
2人は笑顔で本署を後にした。

ワゴン車は天神橋を渡り、鉢の木村へ。
三郎はクラクションを鳴らし続けながら村を突き抜けた。
村人らが「何事だ?」と道路に出てくる。

「もう振り返らない!」
三郎は新潟に向け、ワゴン車を走らせた。






という冤罪のお話。
とりあえず個人的には魔女裁判とか大好きだからこの手の映画は嫌いじゃない。

そしてキモは「人を信じること」だね。
自らが損害を受けてまで「正義」を貫けるか。
ほとんどの人がその「欲望」にひれ伏すだろうけど、とし江は三郎を信じ切り、それが人の心を見事に動かして行く。
「人類に絶望もしちゃいない!」というアムロの言葉を思い出すね。
まぁだからと言って「期待」しちゃうと「やっぱりね」となるけどね。


それはいいんだけど。
「車の音を聞いた=運転手は犯人扱い」「もうろくババアの証言を鵜呑み」とか低レベル過ぎてびっくりする。
三郎が写真を見て「コイツ(富永)がワゴン車に乗った!」と証言したところで「反証」にはならんだろうし、検察側も弁護側もちょっとユルユル。
犯人は白昼堂々と穴掘りしてるしさ。
脚本がお粗末なんだろうね。
三郎の絶体絶命感。検察側のずば抜けクソ人間キャラ。そして「世の不条理」の演出が足りてない。
つまり「胸糞さ」がショボイんだよね。
残念。
アトミ

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