ハレンチ学園在学生

その壁を砕けのハレンチ学園在学生のレビュー・感想・評価

その壁を砕け(1959年製作の映画)
3.4
59年日活。新藤兼人のオリジナル脚本。冤罪事件が多かった昔はこの作品のような逮捕劇はあったのだろうが、さすがに今は車で現場近くを通りかかっただけで即逮捕拘留はないだろう。また長門裕之の刑事がたまたま真犯人を知る「きっかけ」を目撃していまうのも都合がよすぎるが、そもそも本作は社会派のドキュメンタリータッチによって作られた正義の物語=エンターテイメントなのだからそれを問うのも野暮というものだ。実況検分を再現するラスト近くのシーンは実際あんなふうにやるのかわからないが、ドキュメンタリー風を際立たせるには効果を増しているのかもしれない。DVDのパッケージに芦川いづみの顔のアップが使われているが、まさに芦川いづみの可憐さを愛でる映画でそれ以上でもそれ以下でもないというのが本音。また50年代末の長岡柏崎佐渡上野の「風景」が貴重に思える。冒頭から大仰に鳴り響く不穏な音楽は伊福部昭が担当している。