くもすけ

リンクのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

リンク(1986年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

フランクリンいわく、
「鳥」みたいな作品を作れば前作「サイコ2」に続いてまたヒッチかよ、と言われかねない。そこで人類学的なリアリティに基づいてみた。いわば心理的スリラーならぬ人類学的スリラーだね。だそうな。

制作に先立ちフランクリンが考えていたのはチンパンジー版ジョーズだったが、ある日脚本家からナショジオの記事を見せられて方針転換する。

記事の内容はジェーン・グドールのチンパンジー研究。彼女は霊長類学者でチンパンジー研究の立役者。60年代タンザニアに入りチンパンジーが草食でないことを発見し、部族同士の抗争、殺戮、共食いなどを報告した。70年代後半には4年に渡るチンパンジー戦争を観察報告している。
フランクリンはそれまで抱いていた人間だけが同種を殺し合うという常識が吹っ飛ぶのに興奮したようだ。こうしてジョーズのような一方的なモンスターパニックから、猿同士の緊張を描いたものに変更される。

それで映画なのだが、ジャングルの集団抗争劇じゃなくて、郊外の屋敷が舞台で猿3匹と女学生の追いかけっこ。足に飛びついて驚かせるインプが、なんちゃってー、と笑うのが可愛い。明らかに殺意のなさそうなほのぼのした猿たちが編集によって殺人猿に変えられる。屠殺に抵抗して暴れるのはともかく、オチといい屋敷を使い倒した追いかけっこといい、猿を映すのに精一杯でとぼけたトーン(本当に何を考えているのかわからないのが怖いといえば怖い)。コミュニケーション用に絵文字を使ったパネルが出てくるが、「殺す」ボタンがちゃんと用意されているのがおかしい。
シューが臭い芝居でリンクに語り掛け罠にはめると、リンクははやいとこ終わらせよ、とばかり面倒臭そうにマッチをすって爆死する

ジェリー・ゴールドスミスのとぼけた音楽がよい。撮影もよくて、階段まわって屋内を追いかけっこするとどんどんサイコ2に似ていく