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リンクのdiesixxのレビュー・感想・評価

リンク(1986年製作の映画)
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「ヒッチコック『鳥』のアニマルトレーナーが魅せる」というよくわからない枕ことばが冠せられたイギリス映画。監督のリチャード・フランクリンは『トパーズ』でヒッチコックの下で働いた経験もあり、後に『サイコ2』でメガホンを取るなど、ヒッチコック真の後継者と言われていたそう。DVD解説で中原昌也から「誰に?」と突っ込まれてはいるが、「『鳥』のアニマルトレーナーが魅せる」というキャッチフレーズもあながち的外れでもないのか。
 ロンドンの大学に通う主人公(エリザベス・シュー)が、霊長類学の教授(テレンス・スタンプ)を手伝うために人里離れた屋敷を訪れる。そこでは洋服を着て屋敷の執事のように振る舞うチンパンジーのリンクがいた。やがて教授は姿を消し、電話も不通となる。屋敷に孤立してしまった女子大生にリンクは好色な視線を送るのだった。

ほぼ全編の舞台となる屋敷の設計がよくできている。階段や天窓、井戸、地下室などを効果的に用いることでスリリングなドラマが展開。人間のように振る舞いながらも結局、異形の者として拒絶されるリンクのキャラクターと結末は『フランケンシュタイン』をほうふつとさせる。ゴシックホラーの古城の屋敷の美術とあいまって、極めて正統派のモンスター映画に仕上がっている。テレンス・スタンプはいかれたサイエンティストを喜々として演じていて、途中退場ながらも強烈な印象。同時期の『グレムリン』と通じるゴールドスミスのハイテンションなスコアもかっこいい。
 特筆すべき存在はタイトルロールを演じたオランウータンだろう。劇中ではチンパンジーということにされているが、オランウータンに演じさせたことは正解だったとおもう。シャワーを浴びようとするエリザベス・シューを視姦するねっとりとしたまなざしが不気味だ。ああいう表情はチンパンジーでは出せなかっただろう。エリザベス・シューの脱ぎっぷりももちろん貴重だが、ヒロインが自分の危険をはっきりと認識する重要な場面でもある。
動物パニックというジャンル映画の成功の鍵は、モチーフとなる動物の「怖さ」をいかに引き出すかに懸かっている。その意味で『リンク』は成功しているといえる。単なる獰猛性、野蛮性ならほかの動物でも代替可能なわけ。でもサルには知性があるのが、なんとも怖い。通常の動物パニックにある「食われる」「殺される」恐怖に加えて、本作ではレイプの恐怖があるのも新鮮だった。エリザベス・シューもうら若いのでので観ている側も手に汗握るが、助けに来たのに骨折して役に立たない彼氏よりもテキパキと動き、機転を利かせてリンクを撃退する展開も面白かった。
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