horahuki

リンクのhorahukiのレビュー・感想・評価

リンク(1986年製作の映画)
3.7
記録です。

知能ある猿が襲ってくる猿ホラー。ジャーロや『ハロウィン』的な殺人鬼主観映像の典型例からスタートさせたかと思えば、それらがブーム後期でマンネリ状態にあることを逆手に取り、人間ではあり得ない躍動で魅せつつ、若い女性にターゲッティングするというテンプレからも逸脱させる遊び心が楽しい。主体を跨いだ主観映像で徹底することで、全方面で疑問と戸惑いを残しエスタブリッシングへと繋いでいく展開も楽しさが詰まってる。この「違いを際立たせること」で恐怖を煽ったプロローグとは打って変わって、本編では猿と人間の違いを矮小化させることで、より根源的な恐怖へと転換する構成や、唯一の違いは文明だとの発言を端緒に、その文明を舞台移動によって剥奪させ違いを矮小化させる等、手堅くステップを踏むように進めていく手堅さも光ってる。

僻地へと舞台移動する前のやり取りだけでなく、移動後の窓越しの心的障害を印象付けるカットも博士閉じ込め後長時間気づかない主人公を後押ししているし、そこにはやはり義理の父と気が合わない発言も上乗せされている。当然それはリンクと重ねる意図が大本命ではあるのだけど、一義的に留めずに広がりを見せることで、女性蔑視の性質をも集約したりと主人公の置かれている現状を丁寧に肉付けしている。そしてそれら事情や思想を集約した分身であるリンクと対決することで打破させる(しかも男性性不能状態の(作中言語では用がない)男性を助けながら)という綺麗な帰結は非常に理路整然とした脚本のように感じた。

そして大袈裟で過剰な演出を採らずに、静かにこちらを凝視しているリンクの表情に対する絶大な信頼をもって恐怖演出としているのが素晴らしい。人間の知性における優位性は序盤で決定づけられるけれど、表面上の知性ではなくもっと根源的な感情に起因するある種の素直さのようなものを、明らかに嫉妬を感じているリンクから匂わせ、それが人間と少なくとも同等のものであるが故に表面上の知性や文明の低水準が恐怖を上乗せしていくための土台をしっかりと形作ってる。この過程・段取りに重きを置いているため、遠方でじっとこちらを見ることに十分な恐怖が乗っかってくる。


書き殴ってるだけなのでコメント等スルーしてください🙏
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