ハマジン

Mの物語のハマジンのネタバレレビュー・内容・結末

Mの物語(2003年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「火の娘たち」と名付けられた四部作として本作とともに構想されていた『デュエル』『ノロワ』に連なる作品群の1つ。壊れた時計のリズムの狂った振り子音が示す曖昧な時間、「何もない」はずの場所を凝視する猫、不意に唱えられる謎めいた呪文、鏡のように反復される部屋、赤と青が絶えず対立/交換しながら画面を配分する色彩設計、生と死の反転をもたらす「血」のカタルシスなど、映画製作を通じてリヴェットが繰り返し試みてきたことが凝縮された、集大成的「幽霊」映画だった。傑作。
(エマニュエル・ベアール演じるマリーの「正体」と重要なかかわりを持つ女性の「アドリエンヌ」という名前は、おそらくジェラール・ド・ネルヴァル『火の娘たち』所収の『シルヴィ』から引かれたものだろう。記憶の靄の向こうから立ち現れる、黄金色の光の暈に被われた「死者」の名前。)

マリーとジュリアン(イエジー・ラジヴィオヴィッチ)の2度目の「再会」シーンの、画面奥から車道を渡って手前右側に一旦フレームアウトしたジュリアンと入れ替わるように右からフレームインしたマリーが振り返って彼を呼び止め、ふたたびフレームインしたジュリアンと次に会う約束を交わした後、彼がやってきた道を逆戻りするように道路の向こう側へ渡ってバスに乗り込み、彼女を乗せて画面左へ向かって発車したバスを(ジュリアンの視線と同期するように)カメラがパンで追いかけるまでをとらえた1ショットにひたすらしびれた。
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