harunoma

ココニイルコトのharunomaのレビュー・感想・評価

ココニイルコト(2001年製作の映画)
4.3
宿題のために再見。
10代前半のときに調布パルコで観た思い出の品。
すばらしい、やはり90年代は好きだ。2001年の作品だけど。
堺雅人の実質的映画主演デビュー作にあたる。

上司との不倫関係がばれて大阪転勤を命じられた、駆けだしコピーライター志乃(真中瞳)。新しい街での生活になじめない彼女だったが、同僚の風変わりな青年・前野(堺雅人)との出会いをきっかけに変わっていく。

撮監は藤澤順一。硬派で優しい画作り、時に大胆な(アクロバティックな)移動とカット構成、アングル・フレーミング、外でのどん引き、レンズの選択、ピン送りの妙、カッティングインアクション、ラインの侵犯、繋ぎじゃないショットも時におもしろい。雪景色のレールドリー+クレーン撮影にもシビれた。昔観たときは藤澤さんだとは知らなかったけど、いま観てもいい映画だ。被写体への愛もある、ショーケンの『居酒屋ゆうれい』もこれ以前の藤澤さんだったんだな。

堺雅人のようなおっとり飄々として自由で優しく魅力のある人と、このように男女で二人でいるというのは素敵だ。こんな時間を過ごしたいものです。夜の公園の地面にふたりで寝転ぶのは『陽だまりの彼女』でもあった。志乃にとっては打ちのめされた状態で大阪という新天地。そこでの堺雅人との出会い、祈りや願いに関する過去のトラウマ的記憶もまじえた主人公・志乃の再生の物語でもあるが、大阪ということでほっこりとしたコメディ的な瞬間もあるし、「ま、ええんとちゃいますか」が口癖の堺のキャラクターというか(すでに堺雅人なのだが)おもしろい。

あらためてこの時期の岩井俊二の日本映画への影響というのはすごいとも思った。より現実感(ルックもファンタジー要素は少なめ)のある、より作家性の低い岩井というか。彼のヴァリエーションのなかに、多かれ少なかれこの規模の日本映画のドラマはあったように思える。と言っても岩井俊二の映画の画面を作っていた、照明の中村裕樹がこの作品『ココニイルコト』に参加しているし、監督の長澤雅彦は「Undo」「Picnic」「Love Letter」(1994-1995/岩井俊二監督)のプロデューサーなのだから、それも当たり前か。ラストはちょっとあれだが、いい映画だった。

「願うっちゅうのは相手にばっかり
 期待してたらあかんのとちゃう?
 自分のこと信じられな
 結局願いも叶わんと思うし
 願えること
 そのこと自体が幸せなんちゃう?」
harunoma

harunoma