YasujiOshiba

アクエリアスのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

アクエリアス(1986年製作の映画)
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HDリマスター特別版。E君のオススメ。みごとな導入。猫の並行移動ショットからハイヒール。ハイヒールからあみタイツを上がって、超ミニにヘソだしスタイルのバルバラ・クピスティ。なんだセリフは英語なのかと残念に思った瞬間、細い路地の奥から伸びてきた手が彼女を闇へと引きずりこむ。悲鳴が聞こえた。また殺人だ。誰かが叫ぶ。闇の中から梟男が飛び出してくる。シリアルキラーの登場。そこからダンスシーン。え、ミュージカルと思った瞬間。カメラが引く。そこは舞台。劇団員をスタジオに缶詰しての最終リハーサル。ところがそこに、本物のシリアルキラーが紛れ込んでくる。

なるほど『ノートルダムの怪人』というわけか。これなら低予算で撮れる。工夫もできる。ミケーレ・ソアーヴィのデビュー作は、彼の仲間たちと、半ば放置されていたスタジオを貸し切り、そこに閉じこもっての撮影となる。まさに映画の撮影と同じ状況を、映画なかに再現してゆくというわけなのね。

シリアルキラーが呼び込まれるまでは、ややかったるいのだけれど、そこからが面白い。いやはや、なるほどランベルト・バーバやダリオ・アルジェントの下で助監をしていたわけだ。そもそもアルジェントの作為に圧倒されたというのもわかる。

それから、ほとんど笑ってしまうほどのスプラッター。おいおい、そう来るのかというほどのに唐突な首締めやドリルやチーンソー。少し盛り上がってきた。それにしても、この力強さはどこから来るのかと思って特典映像のインタビューを聞けば、なるほど消防士をしてたりしたんだね。災害の現場で目撃した肉体の崩壊ぶりは、この人の演出のどこかに影響を与えてるというわけか。

ラストシーンはまあそんなところでしょうね。あれはウインクだよね。うん、ウインク。それからもうひとつのポイントが拳銃。あれが出てきた時は、それやずるいよと思ったんだけど、そこはイタリア、アメリカ映画みたいに簡単にぶっ放すことはしない。それでも銃が出てきたのだから撃たずに終わるわけにもゆかないわけで、その演出がうまいよね。脚本なのかなんなのか、みごとでござんした。

借りてるBDはあと三本。ちょっと楽しみになってきた。
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