TAK44マグナム

アクエリアスのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

アクエリアス(1986年製作の映画)
4.2
美しき地獄。


「デモンズ」シリーズ(本当はデモンズ関係ないのですが日本では一緒くた)などで知られるミケーレ・ソアヴィ監督の鮮烈なるデビュー作にして比類難き代表作。
脚本は「核戦士シャノン」のジョージ・イーストマン。
彼は「猟奇!喰人鬼の島」では赤ん坊や自分のはらわたを食べていた人ですが、その長身を活かして本作では殺人フクロウ男の中の人も兼任しています。
また、ミケーレ・ソアヴィはジェームズ・ディーン似の警官役で出演。


フクロウのマスクを被った殺人鬼に、演劇の稽古中であった劇団員が次々と殺されてゆくスラッシャーホラーです。

ダリオ・アルジェントゆずりのジャーロっぽい様式美に彩られた血みどろの現代的ホラーですが、フーダニットの要素は無く、犯人の正体に捻りはないです。
チェーンソーや電動ドリルを使った豪快でバリエーション豊かな殺しのテクニックが堪能できるのと、田舎くさくないモダンなビジュアルセンスが光っています。
特に、鳥の羽根が舞う中、犯人が殺した死体をステージに並べ、真ん中に座って満足そうに悦に浸る場面は作品のキー・ビジュアルにもなっているように強力なインパクトをほこる名場面。
低俗と揶揄されがちなホラー映画に美しい芸術性を持たせることに成功しています。
美しさ=狂気の図式がこれほどしっくりくるスラッシャーホラーも珍しいです。

妊娠が判り、恋人(何となく若い頃のスティングぽい)にも産んで欲しいと言われ幸せの絶頂のはずが腹部から身体を真っ二つにされるなど、過激で鬼畜なゴア描写も盛りだくさん。
はみ出たはらわたを黒猫が舐めているのも酷い。

映像美ばかりがとかく語られがちな作品ではありますが、稽古場に閉じ込められてしまう経緯や殺される順番に無理がない展開も良く出来ていますし、殺され始めると加速してゆくスピード感やテンポの良さも相まって、非常にスリリングで目が離せません。
アグレッシヴなカメラワーク、ハッとさせられるショットに目が肥えます。

ファイナルガールとなった主人公の逆襲もえげつなく、最後の最後まで怖がらせることに手を抜いていないのも見事な傑作。
後年のミケーレ・ソアヴィが様々な事情からホラー映画の第一線から退いてしまったのが本当に残念ですね。


※再レビュー


レンタルビデオ、セル・ブルーレイにて