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ドラッグストア・カウボーイのpsychocandyのレビュー・感想・評価

4.0
ガス・ヴァン・サント監督の名を知らしめることになった、いわゆる「ポートランド3部作」といわれる作品群の2作目。

シャブ中のジャンキーたちの破滅的な日常を描いた青春ドラマですが、この手の他の作品に比べて、ドラッグ中毒者としての日常がそんなに退廃的な描かれ方をされているわけではなく、むしろ、映像的には結構スタイリッシュな雰囲気もあったりします。

ストーリー展開としては前半はドラッグ中毒者が薬欲しさにドラッグ・ストアや病院を襲撃するクライム・ムービー、後半は犯罪から足を洗い更生していく姿を描いたヒューマン・ドラマ。前半の方が物語的には動きがあって盛り上がるのですが、後半ではあのウィリアム・バロウズまで出演(しかも、現役ジャンキーの老牧師役)していて、一見地味ではありますが「祭りの後」のような静かで味わい深い人間ドラマが描かれており、これはこれで文学的で素敵です。

そして、何よりもこの頃のマット・ディロンがカッコ良すぎます。当初、主役のボブ役の候補には、マット・ディロンの他にも、トム・ウェイツやショーン・ペンの名前もあがったそうですが、結果的に主役の座を射止めたマット・ディロンにとっては、彼のキャリアの中でもベスト・ワークの一つとなった作品ではないでしょうか。

渋谷のシネマライズで公開されていた当時、スペイン坂の劇場の壁に貼られた本作のポスター(マット・ディロンとケリー・リンチの2ショット)はたびたび盗まれてしまったそうですが、そんなエピソードも大いに納得の、ガス・ヴァン・サント監督のセンスが光る最高にクールでスタイリッシュな青春映画の傑作です。
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