butasu

ノルウェイの森のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

だいぶキツかった。

松山ケンイチは好きなのだがこの主人公には合わない気がする。というか村上春樹の話は、現実感のない美男美女でしか成立し得ないと思う。松山ケンイチと菊地凛子ではどうにも生活感があり過ぎて不自然さだけが際立ってしまう。村上春樹特有の台詞回しが、ただただうすら寒く聞こえてしまう。どんなにキザな台詞を言わせてもしっくりくるくらいの美男美女でないといけない。

直子はもっと華奢で儚く透明感のある、ふっと消えてしまいそうな美しい女性だと思う。菊地凛子では強すぎる。ただの厄介なメンヘラにしか見えない。キズキを失った喪失感を強く抱えているということが観ているこちらにも痛いくらい伝わってこないといけないのに、どうにも見せ方が下手で、「そういうことなんでしょうね」くらいにしか感じられない。大体、冒頭に入る高校時代のシーンにいかほどの意味があるのか。あんなに薄っぺらい回想を入れるくらいなら、むしろ一切見せない方が深みが増したと思う。

逆に緑は素朴さの残る親しみやすい女優にやらせるべきで、バービー人形のような水原希子はやはりミスキャスト。ガリガリで性的魅力にも乏しいし、演技が上手くないのも大問題。あとレイコはもう少し年をとっているイメージだったのだが、映画的な華やかさを出すために妥協したのだろうか。原作には彼女の顔のシワに関する描写もあったと思うけども。玉山鉄二は悪くないのだが、彼のエピソードが本編と完全に乖離しているようにしか見えないのも問題。

この話において性描写は非常に重要な要素であると思うのだが、そこも何だかずっと残念。前述の役者自体の問題点もあるが、演出も下手。ちっとも美しくなく、エロくもなく、ひたすらにダラダラとしている。ずっと「一体何を見せられているんだろう」という感じ。あと村上春樹は会話も露骨に性的な内容が多いのだが、このキャストにさせても下品にしか見えないのも致命的。

ずっと死んでしまった別の男を想い続ける直子と、活発だが実は苦悩している緑。原作ではこの二人の女性を大切に思いながらもどちらにも完全に傾くことができない主人公を描いているが、この映画ではただのスカした二股野郎。興味が持てない話を延々と見せられて、退屈なだけだった。
butasu

butasu