西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣が、自身のアルコール依存症の経験をつづった自伝的小説を映画化した作品。
[あらすじ]
世界中の戦場をカメラに収めてきた塚原安行は、人気漫画家・園田由紀と結婚し、一男一女に恵まれるものの、アルコール依存症により、妻子への暴言・暴力が原因となり離婚してしまう。
元妻の由紀は、塚原は子どもにとっては父親であるし、一度好きになった人を簡単には嫌いにはなれないと言い、離婚後も塚原を家族同様にサポートする。
アルコール依存症病棟に入院し、アルコール依存症が改善の方向に向かうが、病院での検査の結果、塚原の身体は末期のがんに冒されていた。
週末には、ほぼ同様の話を妻の西原理恵子視点でつづった『毎日かあさん』が公開され、こちらはリアル元夫婦の小泉今日子・永瀬正敏主演で注目を集めている。なぜ、ほぼ同時期に同じような企画が出てくるのか・・・時期をずらすよりも、相乗効果を狙ったということだろうか。
よく、「亡くなった人のことを悪く言うもんじゃない」ということもあるので、西原理恵子視点の『毎日かあさん』は、心温まるホームドラマ的な仕上がりになることが予想される。
こちらも、心温まるホームドラマ、なんだろうけど、鴨志田氏のアルコール依存症にスポットが当てられており、アルコール依存症の治療はどんなものなのか、とくに閉鎖病棟であるアルコール病棟の実態(管理体制、食事など)がかなり詳しく描かれており、なかなか興味深いものがあった。
「アルコール依存症が他の病気と決定的に違うのは.、誰にも同情してもらえないこと。」
という利重剛演じる医師の言葉の意味が、映画全編を通じてよくわかる。
やっぱり、アルコール依存症を丁寧に描いているせいか、ストーリーのテンポはあまりよくないので、ちょっと退屈するが、演じる役者は皆芸達者なので、最後まで飽きずに観てはいられる。
特に、永作博美は本当にうまい。ベビーフェイスで年齢を感じさせないが、表情で30代後半の母親をつくっており、全然違和感がなかった。浅野忠信はちょっとがっかり。『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』をあんまり変わらない。
(2011年1月31日)