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人間の條件 完結篇のryusanのレビュー・感想・評価

人間の條件 完結篇(1961年製作の映画)
4.5
9時間半に及ぶ反戦映画の超大作「人間の條件」全6部の完結編。
梶は北支戦争、終戦、逃亡、捕虜、幾多の困難を潜り抜け、ただひたすら愛する妻の元へ帰るため仲間とともに大陸を歩き続ける。人間の醜さや憎悪、慈悲の無い過酷な自然の中で、ただ生きるため自らも罪を犯すことになる。戦争には救いも癒しも存在しない。

戦争を知らない世代に素晴らしい戦争映画は作れるのか?
戦争は良くない、戦争は非人間的、戦争は生の尊厳と生そのものも奪い、戦争は人を不幸にする。
映画など観なくても多分それは誰でも頭では分かっている。
しかし作り手は観客に2度と戦争はしてはならないと心の底から思わせるものを与えなければならないなら、戦争を頭で知っているだけの者が作る映画と、肌で知っている者が作る作品では、おのずと違ってくるのではないか?
戦争の恐ろしさを肌で知っているものは、その切り取り方や描写の迫力が断然違う。
もちろん戦争を知らないでも良い映画を作れる人は居るだろう。「この世界の片隅の片隅に」が良い例。逆に戦争を知っていても誰でも良い映画が作れるわけではないだろう。
でも戦争を知らなければ記録と想像力と漠然とした恐怖に頼るしかなく、戦争を知る者は実体験と肌に染みついた恐怖を表現出来る。この違いはやはり大きいと思う。
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