衛星劇場
幻の蔵出し映画館
2021.05

• #幻の蔵出し映画館

　シネマヴェーラ渋谷で観賞。私の貧しい映画鑑賞歴のなかでは、特筆すべき上映だった……まず、台詞が極めて聞きづらい。何言ってんだか、ほぼ判別不可能なレベルだと感じた。全編、特定の周波数帯をまるごと削ったようなスッカスカの音で、劇伴もほとんど聞こえない。さらに、定期的に謎のノイズ（かなりでかめ）が入る。
　上映素材はBlu-rayだそうで、元のマスターに問題があったのだろう。映像もところどころ乱れていた。まいっちゃったが、まあ仕方ない。

　斯様な有様で、作品に没頭できるような状況では（私にとっては）なかったのだが、西村晃のキモ男演技は、音声を超越するものがあった。ラストもやたら豪儀で良い。しかし「犬嫌い」描写を途中までこまめに描いてきたのだから、ちゃんと犬の見せ場を作るべきだったのではと思うが。

会話聞き取りづらいし古いノイズ音もあったけど緊迫したホテル内の空気よかった。トランプ遊びしたり気持ち悪いいつもの西村晃に、稲垣美穂子にレイプまでしかける垂水さん、やたらと犬を怖がる二本柳寛は犬に襲われて欲しかった。西村晃轢かれーのヘリコプターに車が突っ込んで無事炎上、札束は舞わずに燃えていたのもまた良い。ハワイでプロレスやってたっていうお客のトミナカ、シェパード犬の名前はアスターシブオ。芦ノ湖畔かわせみ荘の内装素敵だったし、呑気な巡査の浜村純が事件にまったく気づいてなくて最高だったし。