ROY

電子頭脳人間のROYのレビュー・感想・評価

電子頭脳人間(1974年製作の映画)
3.7
人間の頭脳と精神をコンピュータで支配する!?近代医学が生みだした恐るべき男の殺戮の果ては!?20世紀の新フランケンシュタインの誕生!恐怖のSF超大作!

グレン・グールドの「Bach: Goldberg Variations BWV 988: Variation No. 25」

■STORY(VHSより)
ハリー・ベンソン(ジョージ・シーガル)はロボットを造る有能なコンピューター科学者だが、 自動車事故がもとで何度か強烈な発作に襲われ、 その都度記憶を喪失していた。彼自身は何も覚えていない。しかし少なくとも今までに2人の人間を殺そうとした事があって、 現在では警察の監視下に置かれていた。

ハリーは、 今後も起こると思われる発作による暴力を避けるため、 麻薬によって廃人になるか、 それとも脳手術によって40個の電極を脳にはめ込まれ、巨大な電算機に支配される人間になるか、どちらか一つの決断を迫られていた。

後者の場合はハリーに暴力的な発作が起こると、いち早くそれを察知した電算機が、ハリーの脳へ向けて快楽信号を送り、暴力を回避することができるのだが、 前者の場合は….....。

悩み抜いた結果、ハリーは後者を選ぶことにしたが、 ハリーの主治医のジャネット・ロス(ジョーン・ハケット)は批判的だった。

果たして彼の選択は正しかったのだろうか……....。

発達した脳外科手術を受けてコンピューターでコントロールできるように改造される・・・・・・。この20世紀のフランケンシュタインとも言うべき物語の原作は、『アンドロメダ・・・』の原作者であり、『ウエスト・ワールド』では監督にも乗り出した才人マイケル・クライトン。

■NOTE I(チラシより)
精神錯乱の発作に襲われると、凶悪な殺人鬼に変身してしまう一人の男が、発達した脳外科の手術を受け、コンピューターによって精神をコントロールされることになった。各方面から注目されたこの大手術は一応成功したかに見えたが、しかし医師たちの予測を超えた事態が発生し、物語は思わぬ方向へと発展していく。

手術後の男の行動を克明に描くことによってこの20世紀の新フランケンシュタインの物語に、よりリアリスチックな恐怖感を加え見事な演出をみせているのが、新鋭マイク・ホッジス監督で、イギリスTV界から進出してこれが監督3作目という若手マイケル・クライトン原作のベストセラー小説 《アンドロメダ・ストレイン》を自ら色製作も担当するという多才ぶりを発揮している。

主演は最近一段と演技にみがきをかけ、トップスターの座を不動のものとしている《パージニア・ウルフなんかこわくない》《ウィークエンド・ラブ》のジョージ・シーガルと《グループ》《シーラ号の謎》のジョーン・ハケット。 2人を囲む共演陣には《おかしなおかしな大泥棒》のジル・クレイバーはじめマット・クラーク、リチャード・A・ディザート, ドナルド・モファットら確かな演技派が顔をそろえている。

人間の頭脳や精神をコンピューターによってコントロールするという、このショッキングなテーマは、実はアメリカでは過去10数年に渡って精神科学の分野で研究されている事実であるという。そこでワーナー映画ではこの作品に登場する近代的な医学設備、電子設備のために60万ドルという巨費を投じてリアルな効果をあげている。

ロサンゼルスの市内を駆けるリチャード・クラインのキャメラ・ワークも見事である。

■NOTE II(チラシより)
◯医療設備29万7千ドル。電子設備29万3千ドル

これがこの作品の専門分野の設備に使われたお金。 階段教室のついた手術室の建築費が3万ドル強。手術台が1万7千ドル。その他の医療器具がしめて25万ドル強。その他に、脳に埋める電極と接しているプルトニウムパワー・バックのとりつけ台医療供給センターから借りてきていたので、バーバンク内に作られたセットには、2週間の撮影の間中24時間勤務のガードマンを置いたということである。他にコンピューター関係の器材には特別技術の指導のもとに29万3千ドルのお金がかけられた。

◯ジョージ・シーガルが初めて丸坊主に

ジョージ・シーガルが自慢のライト・プラウンの髪をバッサリ切ったどころか、剃りあげて本当の坊主頭になった。しかし役者根性に徹した彼は、手術シーン前のインタビューに“私の頭脳をどうするかは、彼ら次第です”と医師たちを指さし、完全にハリー・ベンソン役にしているところをみせたという。 それにしてもイイ男というものは、どんな頭にしても似合うものですね。

■NOTE III
今をときめく「ジュラシック・パーク」のM・クライトンの原作『ターミナル・マン』を映画化した医学スリラー。ロボット工学の権威ハリーは、殺人衝動に駆られる発作に悩んでいた。彼は電極を脳に埋め込み、コンピューターによる発作制御の手術を受ける。だが、手術後の検査を受けなかったために、一定時間ごとに殺人マシーンと化してしまう体となってしまった。自ら制御できない肉体に苦悩するハリーであったが、犠牲者を出したがため、警官隊に射殺されてしまう。冷徹で突き放したような演出は、観る者自身が精神病院に入院してしまったような息苦しさを感じさせる。当時、現代版「フランケンシュタイン」と評価の高かった作品。思えば当時は「悪魔の赤ちゃん」「悪魔のはらわた」「ヤング・フランケンシュタイン」と、ちょっとしたフランケンシュタイン・ブームだったのである。(All Cinemaより)

■NOTE IV
マイケル・クライトンの映画化で、寒々としながらも興味をそそられる作品だ。マイク・ホッジスは、クライトンの物語を、観客の手の届かないところに置くようなスタイルで脚色している。登場人物はよそよそしいか、不快感を与えるだけで、プロットは感情を抑え、テクノロジーと医療がその進歩のためにいかに人間が犠牲になるかを、臨床的に探求することに重点を置いている。セットや衣装は白黒で統一され、音楽も伝統的なものは使わず、グレン・グールドのピアノの録音が1曲使われるだけである。このように、『電子頭脳人間』は簡単に理解できる作品ではなく、かなりの数の観客がこの作品を疎ましく感じる可能性がある。とはいえ、『電子頭脳人間』には、冒険好きな観客に提供する報酬がある。リチャード・クラインの撮影は、この映画に人目を引くスタイルを与え、ホッジスは、特に墓地を舞台にした雰囲気のあるフィナーレなど、この映画の大きな場面で印象的な効果を発揮している。また、『電子頭脳人間』は素晴らしい演技を誇っている。ジョーン・ハケットは、冷淡な医師が手術の効果を目の当たりにして感情を解き放ち、ドナルド・モファットは、手術を許可した重役として官僚の無関心を信じさせる描写をし、ジョージ・シーガルは、神経障害による悪に疲れてしまったまともな主人公を、彼の最も過小評価されている作品で表現している。まとめると、『ターミナル・マン』はすべての人にお勧めできる作品ではないが、SFに対する頭脳的なアプローチを評価できる人には、観がいのある作品であるだろう。(All Movie)
ROY

ROY