Sari

愛より強くのSariのレビュー・感想・評価

愛より強く(2004年製作の映画)
3.8
偽装結婚した男女の痛々しいほどに切ない愛の行方を描き、第54回ベルリン国際映画祭金熊賞をはじめ、世界各地の映画賞に輝いた究極の愛の物語。 

人生に絶望し自殺未遂を起こした中年男ジャイト(ビロル・ユーネル)は、病院で美しい娘シベル(シベル・ケキリ)に出会う。彼女は信仰心の厚い厳格な家族から逃れるため、同じトルコ系ドイツ人のジャイトに偽装結婚を提案する。結婚後、2人はそれぞれに情事を楽しんでいたが、ジャイトは次第に奔放なシベルに惹かれてゆく。

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本作が長編5作目となるドイツの新鋭監督ファティ・アキンが、トルコ系ドイツ人である自らの体験を基に、伝統や宗教といった異文化衝突をリアルに表現。
エキゾチックなトルコ音楽と、パンクロックを効果的に用いた音楽センスが秀逸。デペッシュモード、シスターズ・オブ・マーシー、バースデー・パーティなどの楽曲が彩り、アクロバティックなカメラワークと編集のテンポも良く、音楽映画の印象が強い作品でもある。ジャイトの部屋に貼られたスージー・アンド・ザ・バンシーズのポスターが印象的。

ヴェルナー・ヘルツォーク監督『フィツカラルド』の撮影監督はトーマス・マウホだが、本作の撮影監督ライナー・クラウスマンもフィツカラルドの撮影に参加していたとのこと。

「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」を例に用いられるほどにヘヴィなラブストーリー。
主演はトルコ系ドイツ人のビロル・ユーネル(2020年癌のため死去)は、どこか俳優マチュー・アマルリックを彷彿とさせる。妻役のシべル・ケキリがとても魅力的である。彼女も自殺癖があるため、2人共血塗れのシーンが多く体当たりの演技が光る。
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