Melko

弾丸ランナーのMelkoのレビュー・感想・評価

弾丸ランナー(1996年製作の映画)
3.9
「人は、何かに向かって走る。走れ、タケダ。テメェの生き方見つけて、走れ…!」

私は走ることが大嫌い。
リレーは大好きなんだけど、準備運動の周回ランとか、特にマラソンが大嫌い。
同じところをグルグル回りながら走るのも、かといってデコボコ道を走るのも、嫌い…

陸上部の友達に、聞いたことがある。「走るのって、何が楽しいの?」と…
友達いわく、走るのって、自分との闘いなんだって。
決して楽しくはないんだって。
苦しい、辛い、やめたい
でも、そんな過酷な状況を走り切れた時、自分がすごく誇らしくなるんだって。
ドMの競技なんだと言ってた。

全力で走る姿、まさにそんな究極に苦しい顔しながら走って走って走りまくる、そんな映画。
残業で遅くなってしまったので、短めの尺。前から気になってたコチラ。
ハードボイルドな謎作品かと思いきや、序盤こそヘンテコ展開なものの、中盤以降は展開も人物の心情もしっかり描かれていて、スッキリ、そしてちゃんと落としてくれる結末だった。
案外ちゃんとした作品だった。笑

何をやってもうまくいかない小心者の男。むしゃくしゃした彼は、「デカいことを成し遂げる」と、銃を手に銀行へ。強盗するつもりが顔を隠すためのマスクを忘れたことに気づき、慌ててコンビニへ。
マスクを万引きしようとしたら店員に見つかり、あろうことか銃を奪われ、そして何故か、男は店員に追われることに。
訳ありか、今度はその店員を狙うヤクザが現れ、3人は全速力で街を駆け抜ける……

走り抜ける3人、
追われるトモロヲ
追いかけ追われるダイヤモンド⭐︎ユカイ
追う堤真一
の構図

オリンピックのマラソン選手も真っ青の速度とスタミナで走り続ける3人
そして、走りながら各々の直近の経緯について触れられ、いつの間にかいろんな外野の方々も集合していく。
1日中走ってばかりで、終盤は明らかに3人ともヘトヘトなんだけど、なんだか段々陸上部の練習みたいに爽快な感じになっていく。

アクの強い面々が各々爪痕残してたけど、個人的な白眉はダイヤモンド⭐︎ユカイ!
ヒハヒハ言いながら、瞳孔開いた目で壊れたロボットみたいに追いかけてくる様子、溌剌な若さも相まって印象的。元が狂気的な顔だもんなぁ…(褒めてる)
人混みの向こうに、小首をかしげてコチラを睨みながら突っ立ってるダイヤモンド⭐︎ユカイを想像してごらん…怖いよねぇ〜〜
で、次の瞬間こっちに向かって全速力で走ってくるんだよぉ〜怖いよねぇ〜〜
でもちょっとおかしい笑
途中の歌はなくても良かったかな…?
彼は最後どうなったんだろう…
てかユカイ、フォームはめちゃくちゃだけど足が速いのか、前を走るトモロヲに何度も追いつきそうになってる笑 追いつかないように速度調整してるっぽいのが見えて、ちょっと微笑ましかった笑

最後、「走るのって、すごく気持ちが良かったから。あんなに全力で走ったことなかったから。何でもできるような気がした。」ってケラケラ笑ってた、小心者の男。
あのセリフで、陸上部の友達が言ってた意味がわかった気がした。

「幸福の鐘」見た時も思ったけど、SABU監督は人の全力疾走撮るのが好きなんだろうなぁ。きっと。
Melko

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