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弾丸ランナーのotomisanのレビュー・感想・評価

弾丸ランナー(1996年製作の映画)
3.8
 映画は当たり前な人生なんか見せてくれない。うまくいかなくて当たり前なら、うまく死に花咲かせましょうよ、と思い通りにいかない男三人に普通じゃない破滅街道まっしぐらをお見舞いする。
 まっしぐらついでに東京横断マラソン。時は1996年、失われつつある10年真っ只中、地価も下り坂まっしぐらの東京だから素人ランナーの3人にも走りやすかったろう。
 若年失業急増中、普通のひと代表、タグトモの崩壊過程?信金襲撃妄想中がロッカー代表、覚醒剤注入中、ハイなユカイに追っかけられて、その覚醒剤代金請求中のチンピラ代表、失意の真一に追っかけられる。
 3人とも理想の自分に程遠くリタイア寸前だがドン底なりともこんな自分、ヤメてその先どうしよう?タグトモのワル妄想にリードされて走り出すもランナーズハイで一瞬の輝きに悪心一切が燃え尽きて生まれ変われて満足なら、失われ続ける未来に直面する勇気も取り戻せるだろうか?しかし、監督はそんな気休めなんかじゃ放してくれない。
 ちなみに、経団連はこの年、四半世紀後2020年の経済予測を公表しGDP11兆ドルとした。対して米国12兆、中印韓などアジア10か国で11兆。実際は日5兆、米21兆、中国単体14兆である。財界総理が君臨する経団連にも時の状況の悪さ(頭もわるい?)で事が見通せない96年の未来、もとより3人が将来も生きてく稼ぎも算入済みだろうがまさかのマラソンゴールインがチンピラ真一に対立中の暴力団事務所。経済予測はとかくこうした人的怪しい要因には弱い。
 悪い時代だし、もっと悪くなりそうだし、力は十分使い果たしたし、思い残しもクソもないグニャグニャの3人が三人各様のハイに至って結局3人バラバラ。こんな最期酷過ぎ?それともこれが身の丈?ダブルのハイも抜けたユカイだけロッカーらしく死に場所くらいテメエでキメるそうで、これじゃ文殊の知恵にも与れないまま堕ちてゆくのも幸せだよとガス臭いやくざとサツの旦那方の死体置き場、真一の咥えタバコに火を差し出すタグトモが「あの拳銃、モデルガンだったんスね」と苦笑い、囁くようだった。
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