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弾丸ランナーのナッツのレビュー・感想・評価

弾丸ランナー(1996年製作の映画)
4.0
めっちゃ昔に観た記憶でかなり面白かったので探したらアマプラにありました!
で、再び鑑賞。

男三人がただ走る、その状況にバックボーンと動機と周りで勝手に進行するドタバタを丁寧に描くだけでこんなにも傑作になるんやなーと驚きました。
いやー、本当にサブ監督は巧みです。
後が無いグダグダな男たちの哀愁すら漂うやるせない行動を描かせたらほんまにピカ一やと思います。

職場でいじめられ彼女にも振られそうになりながら人生一発逆転を狙って銀行強盗を目論む田口トモロヲを追うのが、麻薬中毒のバンドマン、ダイヤモンド☆ユカイ。
そしてそのダイヤモンド☆ユカイを追うのが自分の組長を守れず失意の底にあった堤真一という構図です。
そしてそんな3人の哀しき男達に遠からず絡んで来るのが抗争中の暴力団であり、悪徳警察官であり、通行中の白石ひとみであったりするわけです。

爆笑とまではいかずとも、クスリとくる場面は随所に差し込まれ、それでいて先の読めない展開等、80分という短めの尺のですがお腹いっぱいになれました。
鑑賞後真っ先に思い浮かんだ感想は、役者メイン3人、ほんまお疲れ様!でした。
だってね、撮影中は多分殆ど走りっぱなしですよこれ。作中半分以上走ってますから。
底しれぬ体力にはほんま脱帽です。
個人的にめっちゃ好きなのは道行く美女を見て三者三様に妄想するシーン。がっつりエロシーンですがここは爆笑しました。

特にヒーローが出たり、スカッとしたり、恋愛が成就したり等のいわゆる王道からはみ出してる作品やとは思います。
でも作中に出てくる男性キャラの身勝手な妄想って、平均値の男性ならほぼほぼ共感できるんじゃないですかね。
男って何考えてるかわからないって女の人はこの映画観たらだいたいの男の考えがわかるかと思われます。
ねちねちとしょうもない計画を頭の中で立てたり、身勝手な妄想の中に意中の女性を出したり、妄想の中で自分をヒーローに仕立て上げる、世の中の男を勝手に代表して断言しますが、男ってまあまあそういうもんです。
でもそんなしょうもない習性もこうして作品として客観的に観ると、若干の恥ずかしさはありますがそこが面白いのかなとも思うわけです。
ほんまにサブ監督はこういう一面の切り取りがうまい。
とまあここまで絶賛しつつも突っ込みどころや注意点もありまして、
まず上記したとおりあからさまなエロシーンが入るため彼女と観ようとか子供と観ようとか考えてる人は要注意です。
あと当たり前のように人が死にます。
コメディタッチに描かれてて濁されてますが、まあまあ虫けらのように死んでいきますしそのへんも要注意ですね。
突っ込みどころとしては、人間てそんなに走りっぱなしで大丈夫なん、てのが真っ先に思い浮かぶんですよ。かなり不摂生な生活を送ってるであろう3人ですから最初の数百メートルでぶっ倒れるんとちゃうかな、と。
でもそんな疑問も走る3人の心情の変化にシンクロするうちにどうでも良くなるんですよね。
特に田口トモロヲの、すごい、すごいよのセリフは何でもないセリフなんですが、それまでの流れがあってめっちゃ名言でした。
状況は一切好転していないのに男たちはなぜか少しづつ前向きになっていく。
観ている側もほんの少し前向きにさせてくれる、そんな不思議な映画でした。

久しぶりに大杉漣さんの演技を観ました。
渋くてカッコよくて、ほんまに好きやったんでもっとご活躍を見たかったです。

堀部圭亮さんはこの時期どっちかって言うとコメディアンとしての色合いが強かったのですが、役者としても一級の演技力ですよね。

堤真一さんは野田マップで主役をこなされるほどの圧巻の演技力に加えて、めちゃめちゃイケメンでした。情けないヤクザ役を熱演されています。
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