ほーりー

本日休診のほーりーのレビュー・感想・評価

本日休診(1952年製作の映画)
3.9
最初に大事なことだけを言います。三國連太郎が可愛い。以上!

井伏鱒二の同名小説が原作だが他にもいくつかの短編も取り入れられているという。下町の開業医を主人公に病院の人間模様をユーモラスかつシニカルに描いた作品。

主演は新派の柳永二郎。助演に長岡輝子、田村秋子、中村伸郎、十朱久雄の新劇のベテラン勢、そして若手スターとして岸恵子、淡島千景、角梨枝子、佐田啓二、鶴田浩二、三國連太郎という豪華な顔ぶれである。

柳永二郎の芝居には多少くささはあるものの、貧乏人でも分け隔てなく治療を施す人情的な老医師を好演している。

個人的には戦争のせいで精神に異常をきたしてしまった三國連太郎が本作のMVPだと思う。

戦争気分が全く抜けきれず、ことあるごとに「号令ーー!!」で敬礼する始末。だけどピュアで誰からも好かれる(というか嫌われない)人柄の人物を演じている。

柳と一緒に渓流釣りにいく場面、テグスを忘れてしまい、その代用品として柳の頭の毛をむしろうとする三國の何と無邪気で可愛らしいことか。

ラスト、夜空に雁の群れが飛ぶシーンは必見。

ご存知の通り、雁は戦闘機のように綺麗な編隊を組んで空を飛ぶ。

主人公は一人息子を戦争で亡くしているという設定で、その息子が歩兵か水兵か戦闘機乗りかは劇中明かされないが、彼は息子の姿を雁にダブらせているのを見ると、恐らく戦闘機乗りだったのではという気がする。

とすると指のお骨のくだりとちょっと矛盾するのだが、あれも鶴田浩二を説得するためだけの嘘かもしれない。

で、同じく雁の群れを見て目をキラキラと輝かせる三國連太郎かやっぱり可愛い。

さて監督は戦後の松竹で木下惠介と並び称された渋谷実。

ちなみに二人は物凄い犬猿の仲だったらしく、撮影所の食堂で二人がかち合わないように助監督が色々苦心したそうな。

■映画 DATA==========================
監督:渋谷実
脚本:斎藤良輔
製作:山本武
音楽:吉沢博/奥村一
撮影:長岡博之
公開:1952年2月29日(日)
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