待つの

殺人者たちの待つののレビュー・感想・評価

殺人者たち(1964年製作の映画)
5.0
「人間味」と形容するにはあまりに陳腐に過ぎる強欲をあけすけに暴露するということが、ハードボイルド第一の原理と言える。第二に例外はないということ。疲れているから人生を抜け駆けする。そして滅する。何人たりとも例外なく。歴史の激動が教科書ではたった数ページで説明されるように、ハードボイルドやノワールが取る人間の生についての叙述はあまりに淡白でドラマに欠け、それどころか無慈悲、無常、虚無でしかない。のっぺりとした強欲に衝き動かされるだけで起伏がない。ヒューマニズムのかけらもなければ、これっぽっちも「推せる」生き方でもキャラでもない。「人間味」という欺瞞を取り払い、安っぽい生き方と人間的に安っぽいキャラに対峙してこそ、「今の価値観」とやらが標榜する「誰もが生きやすい時代」を底上げできるのではないか。推せるものだけを推すというのは、ダメさ加減に溢れ尽くした人間世界に対して最も無関心な行為ではないのか。ダメさ加減を寄せ集めたまるで可愛げのかけらもない「推し残り」のキャラたちを推せる者だけが、人間味を口にして良い。
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