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殺人者たちのtakatoのレビュー・感想・評価

殺人者たち(1964年製作の映画)
3.9
 同じ原作の以前の映画作品も見たが、こちらの方がより原作から離れて殆どオリジナルです。


 基本的にはフィルム・ノワールの定形といって言い、ファム・ファタールあり、回想のカットバックあり、現金強奪ありな枠に沿った作品ではある。


 しかし、時代はもうノワール即ち白黒ではなくカラーになり、時代の変遷もあってヘイズ・コード解除前とはいえ毒々でぃほど過剰なバイオレンスが枠に沿ってるからこそ突出している部分がある。特に女性に対する暴力が何故ってくらい過剰。


 あと、町山さんも指摘されていたと思うが、主人公は実質最初に殺される男で、主役のリー・マービンは彼の意志を代行する存在のようになっているのが奇妙。確かにこの辺は「ポイント・ブランク 殺しの分前」に引き継がれてるかもしれない。

 愉快なところといえば勿論、その後まさか大統領になるなんて想っても見なかったであろうレーガンがあんまり変わらない風貌で悪の親玉をやっている点。この人が出る度に面白くなっちゃってシリアスな物語の異物感あり。


 それにしても、ファム・ファタール役な女優さんがおばさんじゃん!とか、だいぶとうが経ってるB級俳優なレーガンが出てるあたり、当時の映画会社の期待感のなさが伺える。正直全体的に冗漫に感じられて、超ロングで撮られてる画面からいきなりアップになるや相棒が射殺されてる描写のシャープさくらいが驚く点だった。白黒時代のノワールの方が画面も描写もクールでドライだったかも。


 話は変わるが、昔の作品だから仕方ないのかもだがファム・ファタールな金髪悪女スタイルには魅力をどうも感じない。途中で酒場で登場する歌を唄ってる黒人のお姉さんの可憐さのがよっぽど良い(隣に鳥籠に入った鸚鵡がいるのは直接的すぎる暗喩)。


 禁じられたわかっちゃいるけど惹かれざるをえない存在としては、現代では違う存在のが相応しいように思える。お前の趣味やんけ!というだけの話かもだが、「ロリータ」や「ベニスに死す」とは違う形の金髪碧眼ではないロリや美少年が主人公にとって致命的な存在、或いは逆に型にはまって死にそうな社会から外れたアウトサイダーな別の社会への導き手になる存在となるような作品を見てみたい。


 今回も菊川ストレンジャーさんのリバイバル上映で拝見したが、次回上映な「バニシング・ポイント」はやはり必見かなぁ〜。今後も新作よりリバイバル上映でお世話になりそう。
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