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殺人者たちのnetfilmsのレビュー・感想・評価

殺人者たち(1964年製作の映画)
4.0
 聾唖学校に押し入る明らかに堅気ではない2人の男。彼らのコンビネーションは卒なく無駄がない。ターゲットの教師ジョニー(ジョン・カサヴェテス)は殺し屋チャーリー(リー・マーヴィン)、リー(クルー・ギャラガー)にサイレンサー銃であっさりと殺されるという陰惨な展開は、省略の達人であるドン・シーゲルの殺し屋ばりの鮮やかな手捌きだ。だが、殺し屋の片割れのチャーリーはターゲットの目の奥に恐怖が見えなかったことに何やら疑問を抱くのだ。その瞬間から教師になる前はレーサーだった彼の過去をあら捜しする。過去の回想はなかなかにタルいのだが、シーラ(アンジー・ディッキンソン)という女が現れてからジョニーは変わった。ファム・ファタールのような彼女の魅力にメロメロなジョニーはレースにも負け、おまけに車で事故も起こした。忠告する同僚にも耳を貸さない。ここではないどこかを夢見るジョニーはやがて、シーラにジャック(ロナルド・レーガン)という評判の悪い男を紹介した。シーらにとっての本当の男はジョニーではなく、ジャックなのだ。そのことを知ったジョニーは絶望するのだが、彼女の心が自分に向いているのだと、ある行為で確信を抱く。

 したたかなシーラの大胆なファム・ファタールぶりも見事だが、それよりも何よりもジョン・カサヴェテスとアメリカ合衆国元大統領のロナルド・レーガンとが1人の女性を奪い合うという展開が凄まじい。『殺人者たち』のタイトル通り、物語の主役に躍り出るはずのリー・マーヴィンとクルー・ギャラガーがここでは一転し、狂言廻しの役割を演じる羽目になるのだから。はっきり言って殺し屋とは名ばかりで、彼らは刑事ばりにシーラとジャックを問い詰めて行くのだが、死んだジョニーの何かを悟ったような目との整合性が取れない。ドライブ場面のスクリーン・プロセスとスタジオに作られたサーキットとは、実際のレースの様子と苛烈にモンタージュされる。やがてジャックは現金輸送の車を襲う計画を恋のライバルであるジョニーに話し、シーラとの生活を仄めかす。辺鄙な田舎道を道路標識一つで現金輸送車の方向を変えさせるのはアクション映画の王道だ。交通巡査を装った仲間が標識を変えて輸送車を迂回させ、そこで追い越して現金を強奪する。だがあの世へ旅立ったジョニーを中心に置いた彼らの身勝手な意見はどこまで行っても真実には辿り着かない。生前のジョン・カサヴェテスの顔面蒼白のスケベ面、ロナルド・レーガンの迫力の薄い親方ぶりと苦み走ったリー・マーヴィンの表情。エンドロールの食い気味の登場に職人ドン・シーゲルの魅力が炸裂する。
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