ヒロシニコ山

殺人者たちのヒロシニコ山のレビュー・感想・評価

殺人者たち(1964年製作の映画)
5.0
リチャード・フライシャーと並列化され語られることの多いドン・シーゲルであるが、フライシャーが過不足のない「引き算の作家」であるとするならば、シーゲルは「足し算の作家」である。それが顕著なのがまさに本作。とにかく否が応でも盛り上がるオープニングからそのケレンは爆発しており、不要なまでのナルシシズムを感じさせるジョン・カサヴェテスの佇まい(そしてその顔面の傷)に過剰さの顕現が見られる。リー・マーヴィンとクルー・ギャラガー(どうしても『バタリアン』の萎びたイメージが付き纏うが、俳優デビューを果たした本作ではその美男子っぷりに驚かされる)のコンビもブッ濃いのだが、やはり中盤まではカサヴェテスとレーガンに喰われてしまっている感は否めない。とはいえ、スクリーンにうすら笑いを残したままアッサリ退場するギャラガーの散り際や、終幕になり暴力的な動きを見せ、映画を終わらせる気迫に満ちたマーヴィンの存在感は特筆すべきものがあり、その点においても本作はシーゲル流の過剰さに満ちていると言えるだろう。
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