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乾いた湖のlingmudayanのレビュー・感想・評価

乾いた湖(1960年製作の映画)
4.0
三上真一郎、岩下志麻、山下洵一郎の主役3人はみな抗いがたい流れの中で個を求めている。三上はおままごとのような自治会、あるいは炎加代子との間にできた子どもから逃れてテロに傾倒するが逮捕され、岩下は父親の仇に姉を差し出すことで成り立つ生活から逃れて自活を目指すが安保反対運動に流れ、山下はブルジョワ的怠惰の中で気づけば独りになっている。1960年に個であることの難しさということか。その三上と岩下が歩きながら詩を朗読するところを長回しで捉えたシーンは個を求める2人の化学反応がよく描かれている。

今回は武満徹特集で観に行ったがもちろん音楽も良く、特にボクサーが姉の元彼を殴りに行くシーンでは一瞬だけ音楽がやみ、ここで殴ったのだなということが分かるようになっていた。その後ボクサーがアパートの階段を下り、半狂乱になりながら街に向かって駆けていくシーンも素晴らしかった。

映画の舞台になっているのは早大で、当時の正門から大隈講堂にかけての空間(成文堂書店も既にある)が一瞬映る。卒業生にとっては貴重な映像。
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