半兵衛

翼に賭ける命の半兵衛のレビュー・感想・評価

翼に賭ける命(1957年製作の映画)
4.0
メロドラマというにはあまりにも殺伐としている、飛行機に取り付かれた破滅型夫婦とその妻に惚れる整備士、彼らの死へ突き進むようなオーラに導かれていく新聞記者による地獄の関係によるドラマに終始唖然として鑑賞してしまった。それでいて映像の構図やドラマのシチュエーションは洗練されており、美しい滅びの世界となって観客にもたらされる。

冒頭で誰も乗っていない観覧車や観客のいない活気のない飛行場の模様を撮って不吉な映像のイメージを観客に与えてこの映画がどういう作品なのかを暗に伝える演出が見事、そこから泣いている子供(ヒロインの息子)が大の大人に殴りかかるというショッキングな行動へと繋げて観客の心を鷲掴みにする。

夫婦は飛行機によるレースで金を稼いでいるのだが、そんな様子を盛り上げることなく飛行機に病的にこだわる夫婦や飽きてしまい詰まらなさそうにしている我が子の演出などにより死の匂いが充満する世界として描写しているのが怖い。終盤の事故などまるで埋葬のようだった。

終始無表情だったヒロインがようやく笑うラストは晴れやかに、でもその直前の不気味なドラマが暗い影となって覆っているのでどことなく不気味な印象に。

それにしても結婚をサイコロで決定するってなかなかの地獄だな。
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