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スリザーのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

スリザー(2006年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

街の有力者グラントは町一番の美女スターラと結婚していたが、ある夜、些細なことで喧嘩し、ひとり出かけたバーで、昔の女友達ブレンダと再会する。酒を飲むうちに親密になった二人は、森を訪れるが、グラントはスターラに心底惚れているようで、ブレンダに手を出さない。その帰りに謎の隕石を発見する。

低予算でもアイデア次第で面白くなるホラー映画は、ある意味、映画の登竜門。
本作は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズなどで知られる、ジェームズ・ガン監督のデビュー作と知り、鑑賞。
謎の宇宙生命体に蝕まれていく人間たちの恐怖を描いた「ホラー映画愛」に溢れたSFホラーの佳作である。

まず、スリザーの意味を調べたが、「ずるずる滑る、蛇のように滑るように進む」とモノらしい。
その言葉通りのエイリアンが登場する。

危険を察知した瞬間、隕石から何かが飛び出し、グラントの身体に突き刺さったかと思うと、あっという間に体内に侵入してしまう。
その日を境に、街では不審な事件が多発。
街中のペットが姿を消し、行方不明者が続出。
ブレンダも失踪していた。
グラントには変化が現れ、身体中に腫れ物ができ、生肉を喰い、攻撃的になる。
よくある寄生生物型のエイリアンである。

グラントの異常な変化と街で起こっている事件との関連性を感じた警察所長のビルは、スターラの協力を得て、グラントを容疑者とした捜査に乗り出す。

もはや人間とは思えない姿になってしまったグラントは、ビルたちを森へと誘い込み、山小屋に姿を消してしまう。
警官達が山小屋へ突入すると、そこには行方不明となっていたブレンダの姿が。

グラントに何かを植えつけられ、食料を与えられて飼育されたブレンダは、アドバルーンの大きさに巨大に肥大化していた。
次の瞬間、彼女の身体は破裂し、無数の生命体が溢れ出し、警官達の口に向かって一斉に侵入を開始しはじめる。

デカいナメクジみたいな生命体(スリザー)が、ウヨウヨ出てくるのが無茶苦茶気持ち悪い。
ミミズなどの軟体動物がある日突然、大群をなして人間を襲う70年代のトラウマ・ホラー「スクワーム」を思い出す。
しかも、このナメクジに侵入された脳に寄生された人間は、寄生されてない人間たちを襲う。
寄生生物の親玉になったグラントを倒したいビルたちだが、寄生された人々からも逃げなくてはならず、ジタバタするゾンビ風味をプラス。

さらに、寄生された者は緑色の液体みたいのを吐くのでタチが悪い。
この液体は名作「エイリアン」の体液のように酸性で、浴びると溶けてしまう。

グラントだけは寄生された人間を操れる。
宇宙からの侵略者は、地球の生物をグラントを通して全て支配下に置こうとしているようだ。
何者かによって集団の意識が統一されるのはSFホラーの古典的名作「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」である。

ちなみにグラントは、普通に人間だった頃の人格を残して活動を続けている。
そこが本作のミソだ。
グラントは姿こそ変貌していたが、スターラへの気持ちは変わらず、彼女を愛し、求めていた。
まるで「美女と野獣」のような化け物の愛。
怪物となった男の唯一の美点である。
しかし、スターラはグラントを受け入れず刺し殺そうとする。
情け容赦ない何て酷い展開。
しかし、人類を守るためと思えば、やむを得ない。
逆上したグラントにスターラは襲われるが、助けに来たビルは触手にガスを送り込む事に成功し、そのガスにスターラが銃で発火し、グラントは爆死する。

既視感の強い、良くある設定ばかりだが、ノンストップで繰り広げられるギャグとサスペンスには、既にジェームズ・ガン監督の才気が発揮されている。
何より、マイケル・ルーカーら、後の監督の作品の常連俳優が多く出演しており、いかに監督がこの作品と仕事仲間を大切にしているかが分かる。
ホラー映画への愛を感じるオタクぶりと、グロさの間に挟まる笑い。
照れくさそうにほんのちょっぴり入るロマンス。
ジェームズ・ガン監督の好きなものを詰め込んだ作品である。
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