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椿姫のhasseのレビュー・感想・評価

椿姫(1937年製作の映画)
3.5
演出3
演技5
脚本3
撮影4
音楽3
技術3
好み3
インスピレーション4

○「私が怖いのは退屈だけ」(マルグリット・ゴーティエ)

演出、脚本は凡庸だがグレタ・ガルボの圧倒的な存在感、演技力が映画に惹き付ける推進力となっている。下品な貴族たちに混じりながらも心ここにあらずな、そして刹那的な生き方を享受するマルグリットが、アルマンとの出会いで純情に目覚めていく様が、説明台詞なんか一切なくても視覚的にすぐ伝わってくる。月並みかもしれないが、やはりサイレント期を経た役者は一味違うと思ってしまう。

享楽的で軽薄な貴族たちのパーティに初めて参加して居心地悪そうなアルマンは、誤って飲みサーの新歓コンパに参加してしまった大学一年生の図で面白い。「二次会行こーぜ!」と貴族たちが立ち去ったあと、マルグリットとしっぽり行く感じもありそうなのがまたおもろい。

華美な鏡の前でしなを作って椅子に凭れるグレタ・ガルボの顔と、鏡に移った後ろ姿を同時に捉えたショットは、奇跡といっていいほど美しく、瞬きすることも惜しい。

グレタ・ガルボの声は、個人的にあまり美声とは言いがたいが、「ハ、ハ」という乾いた笑い声はとても好き。アルマンとの純愛パートになると全く聞けなくなるから、あれは空虚な貴族生活に飽いた気持ちの吐露なのだろう。
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