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トニー滝谷のカーネルのレビュー・感想・評価

トニー滝谷(2004年製作の映画)
4.2
(最近偏ってる私の作品群。
こういうのも入れ込んでいかないとw)


〝好きな映画は?〟とか〝印象深い作品は?〟と聞かれると〝Bestってわけではないけど『トニー滝谷』〟と答えてました。が皆さん?って顔するので、あまり言わなくなって久しいけど。
でも実はスクリーンでは観てなくて、レンタルして一気に2、3回観た程度でした。
今回、中古DVDをレスキューしたのです。これも何かの縁かな。

坂本龍一のピアノにのって静かに進む物語は、トニー滝谷の父の時代の話まで含む75分の中編です。

トニー(本名)の半生を辿りながら彼の幸せを、生き方を見ていきます。
そして物語の終わりも静かに実に静かに、次のステージに移るのだろうことがわかるのです。静かに。

元々イッセー尾形の一人芝居も観に行ってたので、彼、好きだったんです。(今はあまり縁がなくなってしまったけど)
中でもこの『トニー滝谷』の彼が好き。
いやトニー滝谷が好き。
大きな動きもなく、大きな声をあげるでなく、地味だけどセンスよくある佇まいが素敵なんです。

原作は読んでません。てか、しばらくは村上春樹原作とは知らなかったくらい。
村上春樹も嫌いじゃないので、そのうち読んでみたい。

もちろん映画作品自体が私の好みで、とても好きな作品となってます。
〝記憶は形を変え、変えるごとに薄らいでいく〟と西島秀俊の声は言います。
でも忘れることはないよ。忘れられない。
一人ぼっちになったトニー滝谷。
そして甦る記憶。
電話をかけるトニー滝谷の横顔と焦げ跡のある証明写真に、少しだけ、ほんとほんの少しだけなんだけどホッとしました。
静かに僅かに、風は吹いているんだと。



この映画は色々な意味で独特です。
語りは西島秀俊。ですが語りの途中で役者のセリフをそのまま当ててきたりするので、ひとセリフが浮き上がる感じ。
ドキッとさせられます。
語りもセリフもピアノもない静寂があり、
これも心地よかった。
トニーの家などのセットは窓が、窓枠がないというかガラスもない四角い穴があいているだけ。はじめ、室内なのに髪の毛が風になびくのが不思議だったんですけど、素通しならそうなるよねwよく見ると幼少期のシーンもそうかも。(予算の都合でスタジオにセットが組めず、広大な空き地にセットを組んだと。天井もガラス窓もない素抜け。騒音や風に苦労したそうです。特に狙ったわけじゃないのに、〝風が通り抜ける映画〟になって結果オーライ)
画面の作り方も独特で、カメラワークやコマ割り、画角と、面白いです。
終盤の広いクローゼットの洋服たちの肩のラインをアップにしていくところが、個人的にツボでした。素材がよくわかって質感が手に取るようでありました。

登場人物が少なく、よって役者も少ない中、準主役の宮沢りえが本当に綺麗。
二役やるけど特にトニーの妻役の彼女は、ちょっと細すぎるけれどそれでもトニーが惹かれるのに納得の美しさでした。
バイトの役では若々しい彼女が可愛くて。
今回観て時代を感じたなぁ〜(笑)

トニーの少年期を演じた篠原孝文が絶妙の地味さwとトニーの特異性を見事に体現しています。

少ない役者陣に山本浩司がいましたね。
宣伝プロデュースに越川道夫〜w


手元にあるので折りに触れ、また観たいと思います。





『日本統一』からは川谷会長の別動部隊、鈴森とコンビを組む岸本役の四方堂亘(しほうどうわたる)が、ほんの一瞬w 幼少期のトニーの美術の先生として登場しました。(一瞬だから日本統一のタグはつけないw)
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