「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」を観たら、久しぶりに「サスペリア」が観たくなったので再鑑賞。
評価が難しい作品です。
いま観ると、どうしても特殊メイクや撮影技術の古さを感じるため、そういう点では怖くない。
血糊感まるだしの血といい、丸見えの心臓といい(肋骨どこいった?)、迫力不足のラスボスといい…、
犬も、ああ牛肉食べてるのねって感じだし、場面によっては剥製に見える。
テンポも遅く、ストーリーもたいして面白いとは思えません。
なのに、全体が醸し出す雰囲気がめちゃくちゃこわい。
悲しげなメロディー。
…に重なる囁き声。
赤を中心とするどぎつい色彩。
インテリアへの異様なこだわり。
忍び寄る何か。
何かの影。
何が怖いって、監督のセンスと狂気が怖い。
印象的なのは、やはり冒頭の自動ドアのシーンですね。
機械部の意味不明なアップが、なんとも言えない不気味さと不穏さを醸し出します。
これからヒロインが否応なしに何かに巻き込まれていく嫌な予感が…。
人間と対照的な機械の冷たさを感じさせ、犯人の冷酷非情さ、ナイフなどの凶器を早くも連想させます。
もしやあとで誰かが、何かの機械に挟まって犠牲に…とまで想像して、ゾッとします。
ただ自動ドアが開いて閉まるだけで、です。
こういった想像力を喚起するものが、随所に散りばめられています。
何も起こらないシーンがいちばん怖い、「史上最も美しいホラー映画」。