不在

冒険者たちの不在のレビュー・感想・評価

冒険者たち(1967年製作の映画)
4.6
男とは常にスピードの快楽を求めている生き物だ。
まるで立ち止まると死んでしまう動物のように、自由を求めて男達は走り続ける。
三人の主人公のうち唯一の女性であるレティシアは、車や飛行機に用いられる鉄を、芸術に作り替える。
形は違えど同じ物を使って心の自由を表現しようとしている点で、この三人は通じ合っていた。
だからこそ彼らはほとんど言葉を交わさぬまま親友になる。
そしてそんな友情を壊すのは、いつだって金だ。

ある大きな事件の後、二人の男は別々の道を行く。
一人はサングラスで気持ちを隠しながら、未だに自分自身の自由を求める。
しかし以前は確かに感じたスピードによる快楽も、今ではもう彼を救う事はない。
そしてもう一人の方は、他人の為の自由を模索し始める。
スピードを捨て、地に足のついた救いを求めている。
彼は常に人を理解しようと努めていた。
アラン・ドロンはまだ若く、それが出来なかったのだ。
最後のシーンは、まるで三つの魂が寄り添っているように見える。
悲劇と悲観は別物である事を改めて感じる作品だった。
不在

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