ポルりん

怪談番町皿屋敷のポルりんのレビュー・感想・評価

怪談番町皿屋敷(1957年製作の映画)
2.0
■ 簡易メモ
一般的に『番町皿屋敷』と言われてイメージできるストーリーは

「武家屋敷に奉公にあがったお菊は主君のお気に入り。
その事が気に食わない周りの人々がお菊に家宝の皿を割った犯人に仕立て上げられる。
怒り狂った主君はお菊を手討ちにし、死体を井戸に捨てる。
幽霊となったお菊は毎夜毎夜に井戸から出てきて、1枚2枚と皿を数えだし、10枚目になると1枚足りないと呻く。
それらの出来事に武家屋敷の人々は恐怖する。」

と言ったものだろう。
しかし、本作はその一般的な『番町皿屋敷』ではなく、岡本綺堂の戯曲『番町皿屋敷(1916)』が元になっている。
なので本作は、周りの人にハメられるのではなく、お菊が主君の愛を試すために故意に皿を割るといった悲恋物語となっている。

なかなかに興味深い物語であるが、本作が悲恋物語として描ききれているかと言われたら、そうでもない。
色々と問題はあると思うのだが、個人的には大きく2つの問題点があると思う。


① 主君とお菊が惹かれあうまでの描写がない。

個人的に悲恋物語というか恋愛物語を描く上で、視聴者を感情移入させるために重要なポイントとして、愛する者同士が出会い惹かれあうまでをしっかりと描くことだと思う。
本作ではこれが決定的に足りていない。
正直、2人が何で惹かれあっているのかが映像を観ている限りでは全く理解できず、ただ単に主君はお菊に欲情し、お菊は主君が好きと言うよりも支配欲に駆られているようにしかみえない。
こんなんなので、2人の恋愛が成就できなくても、観ている方は

「まぁ、そりゃそうだろう」

と特に感情を揺れ動くことはない。
2人が惹かれあうまでの過程をしっかりと描くべきだったと思う。


② お菊が自己中すぎる

こういった古典怪談の場合、化けて出てくる女性は、生前の容姿は美しく、そして性格は大人しい女性が多い。
美しい女性はメイクで幾らでも恐ろしく表現できるし、大人しい女性がブチギレるとギャップで恐ろしさを感じやすい。
そして、本作のお菊も容姿端麗で大人しい性格でいいと思うんだが、何を思ったのか本作のお菊は全然大人しくなく、自己中で支配欲が強い女として描かれている。

例えば


主君がお家の為に戦略結婚しなければならない ⇒ お菊「ふざけんな!!そんなのいいから私と結婚しろ!!」

家宝の皿を割ったら、最悪お家がとりつぶしになる ⇒ お菊「ムカつくから、この皿割るわ!!」

皿を割ったことに主君が大激怒 ⇒ お菊「はぁ?何キレてんの??お家とりつぶしより私の方が大事でしょうが!!」


こんな感じだから、観ているこちらとしては怒りメーターが今にも振り切れそうで、

「早く斬り殺してくんねぇーかなぁ~」

としか思えない。

何というか主君が気の毒でしょうがねーよ。
こんな自己中女に欲情したために、幽霊には憑りつかれ、チンピラに斬り殺されちまうし・・・。

誰かお菊の死体がある井戸の中にクソでもぶち込んどけよ!!
ポルりん

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