垂直落下式サミング

DAGONの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

DAGON(2001年製作の映画)
4.5
お高いBlu-rayを買ってしまったのに、配信であった。
クルージングをしていた若者たちの乗るヨットが、嵐のせいで座礁をしてしまう。彼らは負傷者を救うため、寂れた漁村へと助けを求めて上陸。だが、村は人影もなく不気味な気配で、どこか様子がおかしい…。
ラグクラフトのなかでも有名どころの『インスマスの影』を、舞台をスペインにうつして本格映像化。トゥクルフだったら何でもいいようなイタいファンが褒めてんのかと思ってたら、僕のような非愛好家の鑑賞にも耐えるダークでアビスなファンタジーでございました。
異教徒の閉鎖空間モノであるし、スプラッターものでもあるし、海洋モンスター映画でもあるし、ラブストーリーでもある。このジャンルの複合に成功しており、俗悪映画としてのポテンシャルが高い。
クライマックスでは、捕まったヒロインが素っ裸で四肢拘束の磔にされた挙げ句、刃物で皮膚を引き裂かれてるリョナ展開!
薄暗い地下から微かにヒロインの呻き声が聴こえてきて、ゆっくりと状況をみせていく描写が素晴らしい。実はそんなに残虐な描写ではないのだけど、捕まって仲間と別々にされたうえ、ジジイはひどく残酷に殺されてしまっているから、あの女の人はどうなってしまったのかと観客に想像する時間を委ねたうえで、結果のみを提示してくる。行間を読むことで、彼女の味わった痛みと恥辱に想いを馳せ、ゾクゾクすることが可能。うまい表現だと思います。
拷問するのが女ってのも、シコりやすいポイントなんですよね。懇願も罵倒も意に介さず、女の肌を切りつけて血まみれに。前のシーンで、世におぞましきこの共同体には掟や規律が存在することをほのめかすし、この生け贄の儀式にいたっては厳格な教義に則るものであるはずなのに、すこし苛立っていそうな表情や必要以上には痛めつけたであろうサディステックな態度からは、私情を捨てきれていない人間臭さも漂ってくる。これは、一人の男をめぐる女の戦いでもあるのだ。
変態嗜虐趣味者へのサービスもそこそこにしといて、ついにLet's いけにえ。オーディエンスのテンションはハイボルテージに。いあ!いあ!手首をくくりつけた鎖の下がっていき、水に沈められそうになるのを必死に抵抗するのに、主人公に引き上げられたときには身体は汚水にまみれて、意識はあるのに顔に生気がなく放心状態。水のなかにいた異形の存在の片鱗に触れただけで、これまで気丈に振る舞っていた女の心は、完全に折れられたのである。えっろ。
時間にしてほんの数秒、殺してと懇願するが、それを上回る絶望が深淵から這い上がってくる。さらに、いとも簡単に触手系美女に寝とられてしまう男。まじでー?!純愛だったのに大裏切り。究極に胸糞バッドエンドのはずなのに、なんとも耽美だった。クライマックスだけでも、何度でも巻き戻してみたい。