家族だけは絶対に折れない束
本作でデヴィッド・リンチ監督の長編作品は完全制覇。何もかもが不条理で悪夢を見ているような体験だったリンチ作品ですが、本作はまるで違う。おじいちゃんがただただ一本道を行くロードムービーですが、映像、脚本、演技、音楽など全ての要素の「優しさ」が強すぎる。死ぬ直前に観たい映画ベストかもしれません。
ある日、主人公アルヴィンの兄ライルが脳卒中で倒れた。アルヴィンは仲違いした兄に会うため、350マイル(約560km)の長い道のりを時速8kmのトラクターで旅することを決意する。ストーリーは本当にこれだけ。それなのに感動のベクトルが異次元。道中、様々な人たちと出会うのですが、人生経験豊富なアルヴィンの人柄や他の人たちの温かさに涙腺を刺激されます。
時間はかかれど、ゆっくりと進む一本道の旅も決して悪くない。もはやゆっくりだからこそ、自然の美しさは人の優しさに気付ける瞬間が増えるのかもしれません。ロードムービーで、アルヴィンが道中で出会った人達のアフターストーリーが気になったのは初めて。それぐらい一人一人が輝いている。
なにより、これが実話だというのにも驚き。なんてほっこりする出来事なんだ。トラクターに乗るおじいちゃんのイメージが大きく変わりました。リンチもやる時はやるじゃん。
2024.3.25 初鑑賞