くりふ

地球最後の日のくりふのレビュー・感想・評価

地球最後の日(1951年製作の映画)
3.0
【ノアの箱舟には白人しか乗れない】

ツタヤで見つけたので。子供の頃、TV放映で楽しんだ記憶があります。ジョージ・パルの創りだす流線型ロケットなどのデザインに「センス・オブ・ワンダー」という言葉を思い出す。

しかしいい歳こいて、現代視点でみ直すと、素直にホメられたものではありません。

地球に放浪惑星2つが接近、一つが衝突コースで地球フルボッコだが、もう一つは逸れるからそっちに移住しちゃえ、というコズミック便乗物語。この事実を発見した学者チームが発表しても国連は信じず、有志だけで巨大ロケット、ノアの方舟を作ることになるが…。

この手の、エンドオブザワールドものの元祖ですね。これより前にもあったでしょうが、いま思いつきません。

83分の短い尺に、必要最低限の描写をぎゅっと詰めており、テンポよく進みます。余計なものはロケットに乗せられませんからね。でも最低限過ぎて、呆気にとられます。

1951年制作で、まだ公民権運動が本格化していないこの頃では、黒人さんはノアの方舟に乗れません!見る限り、アジア系も皆無だったような…。いま見るとゾッとしますね。

乗れる人数に限りがあるから、抽選に漏れた人々が反乱を起こすという定番展開もありますが、反乱起こせるのも白人オンリー。まるで自覚のないナチス映画のようだ。レニ・リーフェンシュタールに撮らせた方が面白かったのかも。

惑星が近づき、巻き起こる天変地異がミニチュアによる特撮で、このクラフト感が楽しい。いくら精緻でもCGではこの肌感が湧かない。

でもな、天変地異来ることわかっていて、何故にレール型滑走路のロケット発射台を作ったのだろう。当時としてはこの案が最新だったのかなあ。まあ実際、大地震が来ても滑走路、ビクともしませんが。きっと超合金Zでできていたのでしょう。

ヒロインのバーバラ・ラッシュさんは、当時22歳くらい。ダグラス・サーク『自由の旗風』での勝気なヒロインをよく覚えていますが、ここではまだ、いもねーちゃん(死語)という感じですね。

一番のディープ・インパクトは、移住先に広がる「絵」でした。間違って銭湯の中にでも行っちゃったんじゃないかと思いました。

<2015.10.29記>
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