穂苅太郎

ゴジラの穂苅太郎のレビュー・感想・評価

ゴジラ(1984年製作の映画)
3.2
自分は結構なゴジラファンだと自負していたものだが恥ずかしながら今作は全く知らなかった。平成ガメラは円盤すら持っているのだが平成ゴジラなるプロジェクトがあったことすら知らなかった。ビオランテとかデストロイヤは怪獣としての存在は知っているにもかかわらずだ。当時、おそらく東宝が社運をかけて挑んだプロジェクトだったろうに、なぜだか歴史から抹殺されていないか?

キャストもこれでもかと言わんばかりの歴代の名優たちが総動員されている。主演の“俺たちの旅”田中健と“事件だわ”沢口靖子を除くわけだが。
いや田中健はまだいい。沢口靖子が凄まじい。ゆりやんレトリィバァが昭和の女優の棒読み具合をちゃかしているが、そこまでやったら大袈裟過ぎて笑いにならないと言われるぐらいのレベルまでの驚くべき棒読み。いやセリフだけではない。振り返ったり見つめたり走ったりするその一挙手一投足が凄まじいのだ。紋切り型の言い方で学園祭レベルというものがあるが、すべての学園祭で頑張ってる子たちに謝ってほしいぐらいのレベル。最初こそ嗤いながら見ていたが、そのうち背筋が凍ってしまった。こんなことを許しているので現在の白石麻衣に至るまで綺麗な顔をした弩級の大根役者を映像エンターテイメント界隈が許容してしまう甘さに繋がったのではないか?などと考えたりして。

でも第一作につなげてそれまでの完全に子供向けからは完全に舵を切ったテーマもプロットも特撮も脚本も当時としては相当頑張った形跡が見える。でもなんだろうな、全部薄っぺらいんだよな。第一作のメタファーとしての原爆空襲戦争へのカウンターにこそ価値があったのだが、本作は衒いもせず直接的に話に練り込んでしまっている。戦後感が薄れた80年代終わりにしかたがなかったのかな?それも含めてすごく頑張ってるんだな。それがむしろ恥ずかしくて。この辺がどうにも奥歯に物が挟まって全体意志として“無かったもの”にされちゃってる気がする。だってここまでの大々的なリブートだったのだから、当然「シン・ゴジラ」の時に話題になって然りだと思うのだよ。

そんなこんなで悲しい気持ちになってしまった一作でした。
穂苅太郎

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